ホルモン療法が効かなくなってしまった乳がんの治療に、「AZD2014」と「フルベストラント」の2つの薬の組み合わせが効果的であると判明した。治療法の実用化に向けた最初の検証であるフェーズ1試験の結果だ。

乳がんのホルモン療法
 米国サラ・キャノン研究所を中心とした研究グループが、2015年4月18日から22日までに米国フィラデルフィアで開催された米国がん学会年会で発表。同学会が2015年4月20日に紹介したものだ。

 およそ3分の2の乳がんでは、がん細胞に女性ホルモン「エストロゲン」を受け取る「エストロゲン受容体(ER)」が出ている。ER陽性の乳がんは、エストロゲンの影響を受けてがんの増殖が促進される。

 このタイプの乳がんの治療には、「ホルモン療法薬」と呼ばれる、エストロゲンをがん細胞が使えなくする薬が使われる。ただ、ホルモン療法は、長く続けているうちに、薬が効かなくなり再びがんが増えてしまう人も出てくる。

期待の新薬「AZD2014」
  「mTORシグナル」と呼ばれる一連のシグナルが、がん細胞に「増殖せよ」と指令を伝えると分かっている。

 「AZD2014」は、mTORシグナルを中断させてがんの増殖を抑える新しい分子標的薬だ。さまざまな種類のがんに対して効果が期待され、世界各国で臨床試験が進んでいる。同年会でも別の研究グループが、卵巣がんと肺がんに対する臨床試験の結果を報告している(抗がん剤が効きづらいタイプの卵巣がんと非小細胞肺がん、2つの薬の組み合わせが有効)。

 今回研究グループは、AZD2014と、最近開発されたホルモン療法薬「フルベストラント(一般名、商品名はフェソロデックス)」を組み合せて治療した場合に、ホルモン療法だけでは効かなくなってしまった乳がんを再び小さくする効果が得られるかどうかを検証した。

量やタイミングを複数パターンで検証
 対象者は、ER陽性の転移性乳がんの66人。全員、28日に1回のサイクルでフルベストラントの注射を受け続けている。

 このうちの43人には、AZD2014を毎日飲んでもらった。1日に飲む量は4通り用意し、そのどれかの量を飲んでもらった。

  残りの23人には、AZD2014を週に2日飲んでもらった。1日に飲む量は2通り用意し、どちらかの量を飲んでもらった。

半数で抗がん効果を確認
 治療の結果、66人中31人で、がんが小さくなったり、大きくなるのが止まったりと、何らかの抗がん効果が認められた。

 測定が可能な状態の乳がんの49人のうち、8人でがんが3分の2以下に縮小したと確認できた。5人は不確定ながら、がんが3分の2以下に縮小したと見られた。

 AZD2014は、毎日飲んでも週2日でも、どちらでも抗がん効果が見られた。

次の検証ステップへ
 主に見られた副作用は、発疹、吐き気、嘔吐、下痢、口のひりひり感、倦怠感だった。週2日の方が、副作用が軽い傾向が見られた。毎日飲んだ人の中の数人は、副作用のために治療を中断した。

 今回のフェーズ1試験で効果が見られたため、現在次のステップであるフェーズ2試験が行われているとのことだ。このフェーズ2試験は「マンタ(MANTA)」と名付けられ、人数や薬の比較方法をさらに広げて進められている。


文献情報
Patel MR et al. Dual mTOR Inhibitor-Fulvestrant Combo Feasible, With Clinical Benefit for Advanced Breast Cancer Patients. American Association for Cancer Research. 2015 Apr 20.

http://www.aacr.org/




引用元:
ホルモン療法が効かなくなった乳がんの治療、2つの薬の組み合わせが有効(Medエッジ‎ )