夏は恋の季節――。古来から多くの詩人や芸術家が燃えるような“ひと夏のロマンス”を讃え作品にしたためてきた。夏という季節は、男女の間に何か特殊な作用を及ぼすのだろうか……。最新の研究で、夏のロマンスは“実を結ぶ”可能性が高いことがわかってきたのだ。
■7月と8月は“子作り”のベストシーズン
sperm1.JPG画像は「Wikimedia Commons」より
最新の研究で専門家は「夏は妊娠に最適な季節である」と主張している。夏のロマンスは“実”を結びやすかったのだ。
イタリア・パルマ大学病院の研究チームが5,188人の男性から集めた11年間にも及ぶデータを用いて行なった研究が先頃、医学誌「Chronobiology International」で発表された。
人間の男性の精液1ミリリットル中には6000万から1億匹の精子がいるといわれている。1回の性交で放出される人間の男性の精液の量は、2〜5ミリリットルであるから、毎回実に1億2000万匹から5億匹の精子がオタマジャクシのように鞭毛(べんもう)を振りながら前進を続け、子宮の奥にある卵子を目指して旅立っているのだ。
まさに“人海戦術”という感じの頼もしい(!?)戦略だが、当然のことながら精液のコンディションによって大きく“作戦”の難易度は変わってくる。妊娠の成否に大きな影響を及ぼすのが、活発な精子の数と精子の運動性能である。
今回のパルマ大学病院の研究によれば、男性の精液の状態は季節による変動があり、精子の運動性能が最も高くなるのが7月と8月であるという。したがって、この時期の子作りは成功しやすいということになるのだ。これはテストステロンのような男性ホルモンのレベルが季節によって変化していることに起因しているということだ。
「今回の研究で男性の精液に季節変動が存在することを発見しました」と研究を主導したアルフレッド・デ・ジオーギ博士は論文に記している。また精子の運動性能だけでなく、活発に活動する精子の割合も夏場は平均65.3%と高く、冬の間はこれが50%以下に落ち込むという。
多くの動物には繁殖期があり、1年のうちで性交を頻繁に行なう一定の時期があるが、人間も緩やかな形ではあるが季節による体調の変化が生じていることになる。生物学的にも夏は人間にとって“恋の季節”だったのだ。
■精子の過酷なサバイバルレース
sperm2.JPG画像は「Wikimedia Commons」より
しかし意外なことに冬の間のほうが、精液中の精子の数は多く“濃い”ということだ。しかし分母となる数は多くとも、活発な精子の割合は低く運動性能も落ちているということで、夏よりも“子作り”には向いていないという。
子どもを望み定期的に性交を行っているにもかかわらず、妊娠しないまま1年以上が経った状態が「不妊」と定義されているが、確率からすればその責任の半分は男性の側にあることになる。いわゆる「男性不妊」だが、妊娠するためには少なくとも精液中の精子の40%が活動していなければならないといわれ、また精子の運動性能の低さも不妊の大きな要因と考えられている。それというのも、精子の“旅”はいくつもの難関が待ち構える“サバイバルレース”だからだ。
精子にとって苛酷な酸性状態に保たれた膣内をなんとか通り過ぎて生き残った精子は、次にとても泳ぎ難い粘性の高い液に満たされた子宮頚管に放り出され、狭い卵管開口部をくぐり抜けてやっとの思いで卵子に辿り着くのだ。1億匹もの精子が放出されても、最後の卵子に出会えるのは数十〜数百匹ともいわれてる。運動性能の高い精子しかこのサバイバルレースを勝ち抜くことはできない。いや、むしろこの苛酷な旅路は優秀な精子を選別するプロセスなのかもしれない。
現在は人工授精という手段も選べるが、やはりこのサバイバルレースで選り抜かれた精子が着床し受精してこその我が子、という感は否めないかもしれない。現在、北半球在住で“当事者”にある方々におかれては、これから迎える7月、8月をぜひ有効活用していただきたいものだ。
(文=仲田しんじ)
引用元:
研究で明らかになった、「夏が恋の季節」である根拠とは?(TOCANA)