県内3カ所の児童相談所が対応した昨年度の児童虐待の件数が、540件だったことが県のまとめでわかった。過去最多だった2013年度から20件減ったが、依然として高止まりの傾向にある。県こども家庭課は「住民の通告意識が高まっている」と説明する。

 件数は、中央・都城・延岡の各児相が対応した事案を県がまとめた。同課によると相談内容は、食事や入浴をさせないなどのネグレクトが225件(41・7%)で最多。心理的虐待が163件(30・2%)、身体的虐待が142件(26・3%)、性的虐待が10件(1・9%)と続いた。12年度から、心理的虐待が身体的虐待を上回るようになっているという。

 被害に遭う子どもは、未就学児が250件(46・3%)と最も多かった。小学生は182件(33・7%)、中学生は83件(15・4%)。虐待を加えるのは実母が357件(66・1%)、実父は130件(24・1%)。継父や継母からの虐待は39件(7・2%)だった。

 ■虐待リスク、欠いた情報共有と連携 都城の乳児餓死、検証報告書 児相につなぐ必要、指摘

 児相に情報が届かなかったために、540件に含まれなかったケースもある。昨年6月、都城市で生後5カ月の乳児が餓死した事件では、母親の鷲巣綾香(22)と同居人・九平沙耶乃(22)の両被告が保護責任者遺棄致死罪で起訴され、裁判員裁判の準備が進んでいる。

 起訴状などによると、鷲巣被告は次男の大志ちゃんが亡くなる約2カ月前から外泊を繰り返して授乳せず、養育を任された九平被告も十分なミルクを与えなかったとされる。大志ちゃんは栄養不足で餓死した。

 大志ちゃんの死を防ぐことはできなかったのか――。5月下旬、大学教授ら専門家でつくる県社会福祉審議会の検証部会がまとめた報告書が公表された。

 それによると、鷲巣被告は13年9月、大志ちゃんの妊娠を市に報告。その際のアンケートで「経済的な不安がある」「パートナーとの関係が良好でなく、連絡も取れない」と回答していた。ただ、市の母子保健担当者は虐待対応の担当者に報告しておらず、報告書では「未婚での若年出産や経済的困窮など、虐待のリスクがあった」と指摘。情報共有し、児相などと連携するべきだったとした。

 また、14年5月に市の母子保健担当者らが2度自宅を訪問したが、不在で面会できなかったこと▽長男(3)が通っていた保育園から「虐待の疑いがある」と市に指摘があったのに、長男の様子を確認しなかった点も問題視。「面会が困難な場合は、児相に直ちにつなぐ必要がある」とした。

 一方で、「行政の力だけですべての事案に対応するのは困難」だとして、主任児童委員や民生委員による地域の見守り体制を活用すべきだとも提言した。


引用元:
児童虐待540件、高止まり 昨年度、児童相談所の対応件数 宮崎県(朝日新聞)