非閉塞性無精子症という、精子の通り道がふさがっているわけではないのに精子が放出されない状態のとき、精巣精子採取術(TESE)という方法で精巣から直接精子を取り出せることがあります。これによって、体外に取り出した卵子と精子を融合させる顕微授精(ICSI)が可能になります。このTESE-ICSIを試した研究で、非閉塞性無精子症の男性714人のうち13.4%に子どもが生まれるという結果が出ました。


◆男性不妊の治療

研究班は、ベルギーの大学病院で、非閉塞性無精子症の男性に対してTESE-ICSIを行い、出産に至った結果をまとめました。



◆714人の男性に96件の出生

次の結果が得られました。


非閉塞性無精子症のあった男性714人のうちで、最初の精巣精子採取術で精子の回収に成功した人は40.5%だった。合計で、261組のカップルが444回の顕微授精と48回の凍結胚移植を受け、129件の妊娠と96件の生児出生に至った。

男性714人が対象となりました。そのうち精子を取り出すことができ、顕微授精を行った結果、出産に至ったのは96件でした。

研究班は、「TESE-ICSIは[...]ブレイクスルーである」とする一方で、精巣精子採取術を受けても顕微授精に至らなかった例があることについて「最終的に遺伝的に自分の子である子どもの父親になれたのは7人中1人(13.4%)の男性だけ」と注意を促しています。



非閉塞性無精子症のある男性は、不妊治療が発達する以前は自分の遺伝的な子どもを授かることはあきらめるしかありませんでした。13.4%という数字をどう捉えるべきかという議論はあるかもしれませんが、可能性が生まれたことには大きな意義があります。ほかの不妊治療と比較したうえ十分な情報のもとで治療を選択できる環境が整えば、多くの人の希望になれるかもしれません。


◆参照文献


How successful is TESE-ICSI in couples with non-obstructive azoospermia?

Hum Reprod. 2015 Jun 16 [Epub ahead of print]




引用元:
不妊治療の「ブレイクスルー」、男性が不妊の原因のときの治療技術TESE-ICSIとは?(MEDLEY)