「冷え性に悩んでいる」という人は少なくありませんが、そういう人に限って、体が冷えるようなことを気づかずにしている傾向があります。

 例えば「長湯」。体を温めようとして何十分も、時には1時間以上もお風呂に入るという人がいますが、これは逆効果です。人間の体は常に、生体としての反応をしていますので、温めすぎれば必ず冷やそうとする作用が起きます。これも当たり前といえば当たり前なのですが、気づいていない人が多いのは事実です。

 それに、最近は随分と改善されたとはいえ、お風呂場はやはり冷えます。そして温めすぎた体に水滴をつけたまま脱衣場でウロウロするのは、最も体を冷やす方法です。水滴が蒸発する時に気化熱によって体温が奪われて、体が冷えるのです。冷え性の人は特にですが、そうでない人も湯船から上がったらできるだけ早く、体を拭くのが望ましいですね。

 お風呂から上がった時に体を拭くのにも、理想的な順番があります。背中、手、足、胸、腹、顔の順番で拭くのが、体を冷やさないための有効な方法です。注意すべきは、手や足の指の間をきちんと拭いておくこと。そこに湿り気が残っていると、意外なほどに体を冷やしてしまいます。

●湯船に浸かる前の注意事項も

 お湯に入る前に体を湿らす時にも、理想的な順番があります。まず最初に湯船へ両手を入れ、体にこれから入るお湯の温度を知らせます。次に、手で湯をすくって顔を湿らせます。要するに顔を洗うような感じですが、洗う必要はなくて、顔にこれから入る湯温を教えるのです。それから、足先から順に上に向かって湯をかけます。足、太もも、下腹部、上腹部、胸というような順に湯をかけて、最後が背中になるようにします。このようにして、体にこれから入るお湯の温度を知らせてからお湯に入ると、体はショックを受けません。湯温をすんなり受け入れて、短い時間で温まるのです。

 これはご自分の感覚でということになりますが、七分(時間の7分間ではありません)からせいぜい八分程度温まったと感じたところで湯から出ます。そして、先ほどの順番で体を拭くと、拭き終わった頃に体の芯まで温かさが行き渡ります。

 この方法だと、その後に体が冷えるということがなくゆっくり寝られますが、ただし、お風呂上がりにすぐに床に入るのはよくありません。20〜30分程度おいてからお布団に入るのが理想的。というのは、お風呂上がりにすぐにお布団に入ってしまうと、眠ってから温かすぎて布団をはいでしまうことがあるからです。それによって強烈に冷えて風邪をひく、などということがないようにするためにも、お風呂上がりにすぐ床に入らないようにしたほうがいいですね。

 それから、冷え性の人はよく靴下をはいて寝るようですが、これもよくありません。靴下が足の血管を締めつけて血行を悪くし、より冷えるようになってしまうからです。どうしても足が冷えて眠れない、という人は湯たんぽを使うことをお勧めします。それも眠る寸前に、湯たんぽを端のほうに追いやるのがいいでしょう。

 冷え性の人は、コーヒーやお茶などを飲むことも体を冷やしてしまう原因のひとつですので、限度を超えて飲むのは控えたほうが賢明です。ただし紅茶など発酵しているお茶は、さほど体を冷やすことがないといわれています。そしてほうじ茶も大丈夫。筆者はよく体を温めたいと思う時には、しょうが汁を少し加えたほうじ茶をいただきます。

●風邪薬の注意点

 皆さんがあまりご存じなく、またご存じであっても気に留めていないのが市販の風邪薬に入っている成分のことです。まず、風邪薬にはカフェインが含まれています。1回の服用で25〜30ミリグラム程度摂取することになり、1日3回服用すると75〜90ミリグラムとなります。カフェインには利尿作用があり、排尿時には体温が奪われてしまい結局体が冷えるということは、あまり注目されていません。

 成人の1日のカフェイン摂取量限度は200〜300ミリグラム程度と考えられていますので、風邪薬だけでそれを超えることはないかもしれませんが、間違ってもコーヒーや紅茶、お茶などと一緒に服用することはしないでください。

 ただし、コーヒーや紅茶に含まれているカフェインには、代謝を上げるという良い作用もありますので、冷え性でなければ1日1杯程度は許容範囲です。ちなみにカップ1杯(約150cc)のコーヒーには100ミリグラム程度の、紅茶であれば30ミリグラム程度のカフェインが含まれているといわれています。

 もうひとつ、風邪薬に含まれる成分で気をつけなくてはいけないのは「アセトアミノフェン」という物質です。デンマークでの調査によると、妊婦がこの物質を摂取すると、生まれた子供がADHD(attention deficit hyperactivity disorder/注意欠陥・多動性障害)を発症するリスクが高まることが指摘されています。ADHDは脳の発達障害のひとつと考えられていて、もともとは子ども特有の障害だといわれてきましたが、さまざまな研究や調査によって大人にもその症状が出ることがわかり、実際に多くの人が苦しんでいるという事実もわかってきました。

 症状としては、常に落ち着きがなくイライラしてひとつのことに集中できず、子供であれば授業中、また大人であれば会議中などに体を小刻みに動かしたり、じっと座っていられなくなります。成人のおよそ2.5%の人がADHDだともいわれています。ひどくなると、社会生活を続けられなくなるケースさえあります。英国食品基準庁(FSA)は、タール色素などの合成着色料や安息香酸ナトリウムなどの合成保存料などの食品添加物の摂取がADHD発症のひとつの原因であるとして、食品メーカーに自主規制を勧告しています。

 さて、風邪薬に含有されるアセトアミノフェンに関しては、すでに2012年に世界保健機関(WHO)も報告書の中で、生まれた子供に先天異常を起こす危険性があるので妊婦は服用の際に医師に相談することを勧めていますが、明確な薬害被害が出ない限りは、日本の厚生労働省が規制に動くことはない可能性が高く、メーカー側はアセトアミノフェンを使い続けるでしょう。

 そして、このような異常は、摂取した全員に起きるとは限りません。確率の問題であり、最終的には消費者の選択ということになるのでしょう。起こり得る事実を知った上でどのような選択をするのも消費者の自由ですが、まったく別の観点からいえるのは、「風邪をひくのは悪いことではない」ということです。

●風邪は無理に抑え込むべきではない?

 風邪は、ある意味で体の調整作用と捉えるべきです。普段、偏った栄養摂取をしている人や、化学物質などを過剰摂取している人は、体の中に排泄欲求が高まり、風邪の様々な症状を使って排泄を促し、体を調整しようとするのです。ですから、風邪の症状はむやみに抑え込むべきではありません。風邪薬は風邪そのものを治すことはできず、その症状を和らげるためのものです。風邪を根本的に治すのは、自分自身の治癒力であるということを踏まえて、やむを得ず薬を飲むというのであれば、それはその人自身の判断ですから仕方がないといえます。

 風邪をひいた時に、栄養のあるものを食べるというのも、賛成できません。その風邪がウィルスなどによる感染性のものであれば、なおさらです。インフルエンザを含む風邪の原因となるウィルスは、増殖する時に鉄分を必要とします。ですので、せめて鉄分を多く含む食べものだけは多食しないようにしましょう。風邪をひいたら食事を控えめにして、なるべく消化に負担がかからない食事内容にしたほうがいいでしょう。

 そして、治りかけの時期に冷たい風に当たったり、かいた汗で体を冷やすことのないように過ごすことです。治りかけの時期に激しい動きや無理な体の使い方をすると、それこそ風邪が万病の元になってしまいます。

 特に、冬の風邪の場合は目のケアをしてあげると、スムーズに経過できます。それは、冬の間に私たちの体が大脳神経系を酷使するからです。その部分を緩めてあげると、体は元気を取り戻し、活性化します。

 目を緩める最も簡単で安全な方法は、目の温湿布をすることです。目の温湿布の手順は、まず42〜43℃くらいの少し熱めのお湯(くれぐれも熱すぎないように)を用意し、その中にタオルを一旦ひたしてからきつく絞ります。仰向けになって、そのタオルを目の上に置き、2〜3分たってタオルが冷めてきたらもう一度お湯にひたして絞り、目の上に置く。3〜4回それを繰り返します。

 2回目以降お湯が冷めてきたら、差し湯をして、できるだけお湯の温度を一定に保ったほうが効果が高いです。冬の時期にこの目の温湿布をすると、風邪をひいていない時でもすこぶる気持ちがよいのですが、風邪をひいている時は格別の気持ちよさです。

 風邪は「なる」とか「かかる」といわず「ひく」といいます。英語でも「catch a cold」というがごとく、自分の体の欲求で勝手に風邪を利用して、調整しているということなのです。風邪を上手にひいて、スムーズに経過させるためには、普段の食生活で最適な(オプティマルな)食事をしていることが最も重要なことです。

 ぜひ、オプティマルフードピラミッド(生きていくために必要な必須栄養素と植物栄養素を、過不足なく摂取する方法)にのっとった食事を心がけていただきたいと思います。ちなみにオプティマルフードピラミッドに関しては、本連載第2回記事『“えさ”を食べさせられている現代人 必須栄養素約50種、ひとつでも欠けると生命の危険?』でご紹介していますので、もう一度お目通しください。

 どの季節にも、ほかの季節には味わえない良さがあります。気持ちよくすごすためにも、もう一度食事を見直してみましょう


引用元:
風邪薬に含まれる成分 妊婦が摂取すると子どもに発達障害のリスクが増加(ライブドアニュース)