日本は公的医療保険制度が発達し、最低限の費用があれば均一で良質な医療を受けることができる。このため、子どもの病気による死亡率は先進国でも低い。
一方で、先進国の中でも事故による死亡率は高い。最近改善傾向にはあるが、日本では子どもを事故から守る社会の意識と整備がまだ不十分ではと感じる。
厚生労働省の統計によると、各年齢の死亡原因のうち、事故による死亡は0歳児で3位、1〜4歳で2位、5〜9歳で1位、10〜14歳で3位と高い。年齢によって原因も異なる。0歳では窒息が最も多く、交通事故、溺水(できすい)が次ぐ。1〜4歳では交通事故、溺水、窒息の順に多く、5〜9歳では交通事故、溺水の順に多い。
これらの多くは家庭内で起きる。居間が最も多く、台所・食堂、階段、風呂場でも発生する。こうした事故から子どもを守るためには、保護者が年齢に応じた事故の内容をよく知り、それを防ぐために家庭内の環境を整える必要がある。
窒息を防ぐには、子どもの口に入る大きさの異物を放置してはいけない。子どもは思いのほか大きいものをのみ込んでしまう。異物を吸い込み気管に入ると命にかかわる。
誤飲するもので最も多いのはたばこ。ほかにも、灯油や漂白剤、農薬など誤飲すると命にかかわるものが家庭内には多いので、注意が必要だ。
交通事故を防ぐためには、歩行や自転車に乗る時の事故の予防教育はもちろん必要だ。ただ自家用車の事故も多い。同乗させるときは適切なサイズのベビーシートやチャイルドシートの使用が必須で、保護者がこれらをきちんと取り付けられる技術も必要だ。
また、転落事故を防ぐには、窓や階段に転落防止柵をつけて予防し、乳児を柵のないベッドに寝かせるときには目を離さない習慣をつけるべきだ。
子どもの事故の多くは防ぐことができる。事故が起きれば、保護者にも後悔を伴うトラウマとなる。つまり、子どもの事故を防ぐことは、家庭を守ることにもつながってくるのだ。
小児科医は、日々子どもたちの命を守るための努力をしている。子どもの命を奪うのは病気だけではない。事故だけでもない。
世界では自然災害や戦争で多くの子どもの命が失われている。自然災害に対する対応を進めること、戦争を防ぐことが、子どもたちの命を守るための重要な大人の責務だということも、忘れないで欲しい。
引用元:
子どもの事故防ぐ環境整備を(朝日新聞)