全ゲノム・シークエンシングから、オーストラリアからの報告

卵巣がんの手強さの理由の一端が分かった。

 オーストラリアのビクトリアン総合がんセンター(VCCC)の研究グループが、国際的科学誌ネイチャーの2015年5月28日号で報告した。

7割を占める「漿液性卵巣がん」
 統計にもよってやや上下があるが、研究グループによると、漿液性卵巣がんは、卵巣がん全体の70%を占め、卵巣がんに関連する死亡の60%を占めている。世界中で毎年8万人の女性の命を奪う。過去30年間でこうした数字にほとんど変化がない。

 日本でも卵巣がんは、なかなか発見が難しく、命に関わる場合も多いとされる。

 研究グループは、転移によるものではない卵巣がんのうち、薬への抵抗性のある92人から採取されたがんの細胞と生殖細胞のDNAサンプルを対象として、がん細胞のゲノムをすべて解析するシークエンシングを実施した。

 がんの再発の起こりやすさとの関係を調べた。

遺伝子にダメージ
 結果として、遺伝子にダメージがあり、がんの悪性度に関係していると見られた。

 遺伝子のダメージとしては、深刻な卵巣がんでがん抑制遺伝子である「RB1」「NF1」「RAD51B」「PTEN」の働きが低下しており、化学療法に対する耐性に関わっていた。

 がんを押さえ込む仕組みに異常が起きているわけだ。

 さらに、薬が効きにくくなる原因も調べると、生殖細胞においては乳がんや卵巣がんの発生をうながすと知られている「BRCA1」「BRCA2」の突然変異が関係しているほか、BRCA1を活発にする遺伝子のスイッチをオフにするメチル化が外れていた。薬を細胞から追い出すMDR1の遺伝子が活発になり、細胞の活動を増やすような変化につながっていた。

 複数の遺伝的な異常が組み合わさってがんの悪質さにつながっていると見られた。




引用元:
卵巣がんの手強さ、理由の一端が判明、ネイチャー誌で報告(Medエッジ‎)