運動をする女性は肺がんおよび乳がんのリスクが低いことが2件の研究で示された。いずれも米シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会で発表された。学会発表された研究は一般に、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。


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米スタンフォード大学による第一の研究は、50〜79歳の女性を対象とする長期的な追跡調査である「女性の健康イニシアチブ(WHI)」のデータに基づき、閉経した女性約13万2,000人に焦点を当て、運動量が肺がんリスクまたは肺がんによる死亡率に及ぼす影響を調べた。

約12年の追跡期間中に2,200人強が肺がんを発症し、1,400人が肺がんで死亡したが、運動に費やす週あたりの時間が多かった女性は、肺がんの発症率も死亡率も低かった。なお、この研究では運動時間にのみ着目しており、運動の強度は考慮していないという。

元ヘビースモーカーや現在喫煙している人でも、運動をしていた場合、運動しない喫煙者に比べて肺がんの発症率・死亡率が低かった。運動による便益が最も顕著にみられたのはBMIが30未満の肥満でない女性だったが、BMIが高くても運動の効果がないわけではないと、研究の筆頭著者である同大学の医学生Ange Wang氏は付け加えている。

一方、フランスの研究では、1987〜2014年に発表された計418万人を対象とする38件の研究をレビューした。その結果、身体活動量の最も高い群では、最も低い群に比べて乳がんリスクが11〜20%低かった。運動をしない女性が週4〜7時間の激しい運動を始めれば、乳がんリスクを31%低減することができると、研究の筆頭著者である国際予防研究所(リヨン)のCecile Pizot氏はいう。

この研究では、運動の種類、居住地、肥満と閉経の有無にかかわらずリスク低減がみられたが、ホルモン補充療法の経験のある人には便益が認められなかった。

ASCO広報担当のJyoti Patel氏は、運動によってエストロゲンを産生する脂肪細胞が減少することから、運動が乳がんリスクを低減させるのは当然であり、ホルモン療法により運動の効果が消失するのも道理にかなっていると説明する。一方、別の専門家は、炎症の軽減、免疫系の亢進、体重減少など、多重的な因子が絡むと指摘している。

Wang氏によると、運動により肺がん予防効果が得られるのは、肺機能が向上し、吸入した発がん物質の沈着が抑えられるためだと考えられるという。(HealthDay News 6月2日)


引用元:
運動で女性の肺がん、乳がんリスクが低下(QLifePro医療ニュース)