傷が小さく、痛みや合併症が少ない手術!

30〜40代にも増加中の子宮体がんの腹腔鏡手術が、昨年4月から保険適用に。また、同年12月からは子宮頸がんも一部の病院で保険診療と併用できる先進医療の対象となり、注目されている。

 「子宮がんには子宮内膜にできる『体がん』と膣に近い頸部にできる『頸がん』があるが、どちらも腹腔鏡手術では腸の癒着や感染など合併症が少ない。モニターで拡大して見ることで、がんが神経まで広がっていなければ排尿に関わる神経を正確に温存できるのも利点。開腹手術では20〜40cmの傷跡ができるが、腹腔鏡では5〜15mm程度のだけなので痛みが少なく術後の回復も早い」とがん研有明病院婦人科の金尾祐之医長は話す。

 腹腔鏡手術は、腹部に4〜5個の穴を開け、小型カメラや手術器具を入れて映像モニターを見ながら病巣などを切除する手術法。子宮内膜症など命に関わらない病気では、今や、体への負担が少ない腹腔鏡手術が主流。早期子宮体がんは、開腹手術と腹腔鏡手術で再発率やがんの治癒率に差がないことも分かっている。

■腹腔鏡術ができる婦人科の主な病気
・子宮体がん(保険適用は、がんが子宮内膜にとどまるIa期のみ)
・子宮頸がん(先進医療か自費)
・子宮内膜症(保険適用)
・子宮筋腫 (保険適用)
・卵巣のう腫(保険適用)
・子宮外妊娠(保険適用)

保険適用になっている子宮体がんの腹腔鏡手術は、入院費も込みで40万〜50万円(3割負担)だが、高額療養費制度を使えば、一般所得の人で9万円程度の負担になる。

■子宮がんの手術法

画像のクリックで拡大表示子宮体がんは、子宮だけを切除する単純子宮全摘出術(主にIa期)や準広汎子宮全摘出術(左図)、子宮頸がんには膣や周囲の組織まで広く取る広汎子宮全摘出術(右図)を行うのが標準的。どちらも必要に応じて卵巣・卵管、骨盤リンパ節や傍大動脈のリンパ節を切除する。■腹腔鏡手術は小さな4カ所の傷だけで目立たない

画像のクリックで拡大表示開腹手術では早期子宮体がんの場合、へその下から恥骨の上までメスを入れる。がんが進行し、傍大動脈リンパ節まで切除する場合は、胸の下から恥骨まで開く。腹腔鏡手術では、4つの穴を開けて器具を挿入し、切除した臓器をそこから取り出す。 ただ、現時点で保険の対象になるのは、がんが子宮内膜にとどまっており、切除範囲が小さいIa期(患者全体の5割程度)のみで、Ib期より進んだ人は標準的には開腹手術の対象だ。

「進行した子宮体がんでは、子宮と卵巣・卵管、骨盤リンパ節、傍大動脈リンパ節まで切除した後、抗がん剤治療を行うのが標準的。進行がんこそ、合併症が少なく早く抗がん剤治療に移行できる腹腔鏡手術の恩恵が大きいはず。今後はIb期以上の体がんでも保険適用になるよう働きかけたい」と金尾医長。

方、子宮頸がんの腹腔鏡手術はがん研有明病院など一部の病院でのみ先進医療として実施されているが、入院費も含め自費診療のところもある。

■子宮がんの腹腔鏡手術のメリットとデメリット
◎ メリット
・腸閉塞などの合併症が少ない
・傷跡が小さい
・手術後の痛みが少なく、回復、退院が早い
・患部を拡大して見られるので詳細な観察と緻密な手術操作が可能
・出血量が少ない × デメリット
・術者によっては開腹より手術時間が長い
・術者による技術の差が大きい
・先進医療、自費診療の対象になっている場合、費用がかかる(子宮頸がんの先進医療の技術料は70万〜85万円)
・操作を誤り対処が遅れると、命に関わる事故につながる危険性がある ■先進医療とは
厚生労働大臣が認めた先進的で高度な医療。診察・検査・投薬・入院費などは通常の保険診療だが、先進医療の技術料は全額自己負担になる。先進医療の実施が認められている病院は厚生労働省のホームページで調べられる。

 昨今、肝臓がんの腹腔鏡手術で群馬大学医学部附属病院などで死亡の多発が発覚。子宮がんでも病院間で力量に差がある。日本産科婦人科内視鏡学会の吉村泰典理事長は、「腹腔鏡に関する学会のアンケートで、回答した225施設で2010〜14年11月21日までに12万1341件中5件の死亡が報告されたが、すべて元々の病気が原因だった。子宮がんで腹腔鏡手術を受ける際は、日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医と日本婦人科腫瘍学会の婦人科腫瘍専門医が両方いる病院で受けるといい」と話す。



引用元:
早期子宮体がんの腹腔鏡手術が保険適用に(日経ヘルス‎ )