みなさんは、お風呂は熱いのがお好きだろうか? お風呂につかる時間や湯加減というのは実に個人差があるものだが、時としてお風呂の入り方に気を付けないと、体に大きな負担がかかることがある。

 天然温泉に入ってゆっくりつかっていると、大抵の場合、美肌、アトピー、打撲、捻挫などに対する湯の効能が書かれた看板を見かける。このような看板を見ながら湯につかっていると、つい長く湯に入っていようと思ってしまう。

 しかし、この誘惑にはちょっと注意が必要だ。出血の有無にかかわらず、ケガをしたばかりの打撲や捻挫がある場合はいくら効能があるからといっても長湯をしてはいけない。症状の悪化を招く可能性があるからだ。温泉や銭湯ではなくても、自宅の入浴において同じことが言える。

 地域医療を担う整骨院で足関節捻挫などの急性のケガを負った患者さんに、長湯をしないようにと注意することがよくある。ところが、このような指導をすると患部が湯につからなければいいだろうと、患部である足を浴槽から出して長湯をする方がいるが、体全体が温まってしまえば血行が良くなり、結局は足も湯につけているのと同じで患部が悪化する。急性のケガに対しては、温めないよう気を付けていただきたい。

 ところで、湯の効能として表記されていた看板は間違いなのかと言うと、そうではない。炎症症状がピークを超え、落ち着いた後の処置の一つとして、温泉やお風呂を利用することをおすすめしたい。

 一つのケガに対して正反対のことをするので、一見矛盾しているように感じるが、これにはケガの治癒経過に合わせた対処が必要であるためだ。炎症反応が強い間は冷却して炎症が広がらないように食い止める必要がある。しかし、患部の状態が落ち着いてきたら今度は部分浴も含め、じっくり湯につかるなどの温熱に切り替えて血流を上げて組織の修復を促進させる。

 冷却を温熱に切り替えるタイミングの見極めは難しいが、この温冷療法は、体の修復メカニズムを上手に使った方法といえ、医療現場においても患者さんにインフォームド・コンセントをしながら、この活用がなされている。

 一日の疲れをじっくりと癒やすお風呂は我々の生活には欠かせない存在だ。ご自身の体調に合わせたケアの一つとして入浴法を使い分けて欲しい。ただし、くれぐれも「のぼせ」にはご注意を。


引用元:
長湯にご注意、症状悪化も(朝日新聞)