【ロンドン小倉孝保】母系の遺伝性疾患を予防するため世界で初めて卵子核移植を合法化した英国。生まれる子は、両親に卵子提供者を加えた「3人の親」の遺伝子を受け継ぐことになる。来年にもこの移植による出産が見込まれる中、遺伝病の子を持つ親に移植への思いを聞いた。

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 ロンドン郊外に暮らすビッキー・ホリデーさん(38)は2013年12月、パートナーのキース・ニュウェルさん(43)との間に長女、ジェシカちゃんをもうけた。ジェシカちゃんは周りの子に比べて首の据わりや目の動きが遅く、昨年6月の健診で遺伝病のリー脳症と診断された。

 「心臓が破れるほどつらいニュースだった」とホリデーさんは言う。この病気は、乳幼児期から運動発達の遅れがある。医師からは、「あまり長く生きられないかもしれない」と告げられた。

 その後、ジェシカちゃんのリー脳症は、ホリデーさんの卵細胞の小器官ミトコンドリアの異常が原因とわかった。「家族や親類にミトコンドリア異常は皆無だったので、信じられなかった。母として恥ずかしく、キースにも罪の意識を感じた」

 ホリデーさんとニュウェルさんは昨年9月、卵子核移植が実現すれば第三者の女性から正常なミトコンドリアを受けることが可能になることを知り、同じ悩みを抱える家族や医師と共に移植承認を議会に求めてきた。

 英国では体外受精による不妊治療が公的な管理の下で行われるなど、体外受精に対する社会的信頼が高い。そうした背景もあって英議会は今年2月、新移植を認める法案を圧倒的多数で可決した。

 ジェシカちゃんと共に可決の瞬間を議会で見守ったホリデーさんとニュウェルさんは「英国が新しい技術を採用することに積極的であることを幸せに思った」と口をそろえる。

 卵子核移植について、キリスト教団体などは「倫理に反する」「親が望む性質の子を人為的につくることにつながる」などとして反対している。だが、ホリデーさんは言う。「ジェシカのような障害を持った子を生もうと思う親はいない。新しい技術なら、ジェシカのような不幸を止められる。反対に戸惑っている」

卵子核移植で生まれる子は父、母に加え、卵子提供者のミトコンドリアDNAを受け継ぐことになるが、ホリデーさんとニュウェルさんは「提供者からのDNAは全体の1%以下。この移植で生まれた子もジェシカ同様、私たちだけの子と考えられると思う」と話す。ホリデーさんは現在、自分のすべての卵子のミトコンドリアに異常があるのかどうかを確認する検査を受けている。結果次第で卵子核移植を受ける予定だ。



引用元:
英・卵子核移植合法化:遺伝病の子の親、期待(毎日新聞‎)