前回まで、不妊の原因で大きな割合を占めるホルモンについてお話ししました。今回はもう一つ、不妊原因として大きな割合を占めている卵管、子宮に関する検査についてお伝えします。
卵管の通過性や卵管周囲の癒着、子宮の形を評価するための検査として、「子宮卵管造影検査(HSG)」があります。これは造影剤を子宮、卵管に注入し評価するレントゲン検査です。しかし、この検査を行う前にしなければいけない検査が二つあります。
一つは甲状腺ホルモンの検査です。HSGは使用する造影剤にヨードを含むので、甲状腺ホルモンに影響します。このため、HSGの前に甲状腺の機能が正常かどうか調べておくことがとても大切です。
もう一つはクラミジア感染症の検査です。クラミジアという菌に子宮や卵管が感染していると、HSG検査で造影剤が子宮から卵管そして腹腔内に流れるとき、クラミジア菌が腹腔内に拡散して感染がさらに広がる危険があります。このため、HSGの検査の前にはこの菌の有無を検査しておくことが大切になります。
また、この菌は不顕性感染といって、感染していても症状が乏しいことも多いため、感染に気付かないことも少なくありません。血液中のクラミジア抗体を測定して、この菌の感染があるかないかを調べます。
感染の初期だと、この菌が子宮の入り口あたりにいるので、クラミジア抗原検査もできますが、感染してから時間が経っていると、菌は子宮の入り口にはおらず子宮の奥や卵管、場合によっては腹腔内、肝臓の周りまで達していることもあります。
感染の症状があまり出ない、すなわち、感染した部分が少し重苦しいだけの人もいるので、気づかないうちにおなかの中に広がっている場合があります。抗体検査で陽性の場合は、まずこの菌に対する薬を服用してから、HSGの検査となります。
また陽性の場合、夫にも同時に服用してもらいます。菌が男性の尿路系にも存在することも多いので、夫婦のどちらか一方だけの治療では、治療していない配偶者から再度感染する危険があるからです。
クラミジア抗体陽性者は、薬の投薬後、妊娠されても注意が必要です。それは、卵管内腔の通過性はあってもクラミジア感染により、卵管上皮が少しダメージを受けたり、卵管周囲に癒着を生じたりすることがあるからです。
このことにより、卵管膨大部で受精した胚が卵管を移動し子宮まで到達することができず、卵管に着床、すなわち子宮外妊娠(異所性妊娠)を起こすことがよくあります。ですので、妊娠初期は、妊娠初期から上昇する血中のホルモンhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を測定しながら、赤ちゃんを入れる袋(胎嚢)が子宮内に見えてくるかを超音波断層装置で頻回に検査することが大切になります。
特に妊娠5週(排卵から3週間後)で胎嚢が認められない場合は、さらに注意深く検査することが大切です。
今回は、子宮卵管造影検査の前に必要な検査とその意義についてお話ししました。次回は子宮卵管造影検査の核心についてお伝えします。


引用元:
《44》 不妊の検査E(apital)