卵巣がんを増やすような悪さをする仕組みが女性の体の中で特定された。

 まず、がん細胞を攻撃させない仕組み「PD-L1」が悪さをしている。

 その上に、「CD-8」と呼ばれる分類分けができるリンパ球が悪さをしている。

 治療を考えるときに重要だ。

日本の研究グループによる報告

 京都大学大学院医学研究科・医学部の安彦郁氏らの研究グループが、がん分野の国際誌であるブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー誌において2015年3月31日に報告している。

 卵巣がんを持つネズミで検証した結果だ。

 腫瘍細胞の表面の膜に存在しているタンパク質「PD‐L1」は、がん細胞を攻撃する仕組みを抑えるという意味で悪さをしている。

 PD-L1は「免疫チェックポイント」という今注目される仕組みと関係するタンパク質だ。

 がん細胞が免疫の力をそぐ仕組みとなる。免疫から自らを守ることになる。

 もともとは免疫の暴走を防ぐための仕組みなのだ。

 がん細胞の持つ「PD-L1」と対応するように、人間をはじめ「PD-1」というタンパク質が存在している。相互の作用により免疫の攻撃力を落としている。免疫チェックポイントと呼ばれる仕組みとなる。

 この仕組みを邪魔すれば、がんにフルパワーで攻撃できるようになる。「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬だ。

 ここをうまくコントロールするのが大切になっている。

PD‐L1を増やすとがんが増大

 PD-L1をむしろ多くしてしまう仕組みが、CD-8を持つリンパ球であると分かった。CD-8がインターフェロンガンマ(INF-γ)というタンパク質を出すと、がんの増大を促すというものだ。PD-L1とインターフェロンガンマが揃うと、がんを野放図に増やす最悪の結果につながるようだ。

 やや複雑だが、研究グループは、順にがん細胞と、がん細胞を攻撃するリンパ球との関係を調べている。

 おなかの内側を裏打ちしている「腹膜」に存在するがんでは、CD-8を持つ細胞が多く存在していた。細胞表面のタンパク質には「CD番号」と呼ばれる通し番号が付けられる。細胞の種類によって、どれが表面に存在するか、いろいろ調べられている。今回はCD-8だった。

 このCD-8を持つリンパ球が増えるほど、がん細胞のPD‐L1をより多くしている関係があった。がん細胞は攻撃されにくくなることになる。

 その上で、ネズミを対象として、「IFNGR1(インターフェロンガンマ受容体1)」というタンパク質を作れなくすると、腫瘍細胞でのPD‐L1が減ると分かった。インターフェロンガンマを効かない状態にすると、PD-L1が力を発揮できなくなるわけだ。

 結果として、がんに入り込むCD-8を持つ細胞が増えて状況が一変。がんを抑える効果につながると分かった。より長生きにつながった。

 このインターフェロンガンマを皮膚の下のがんに注入すると、PD‐L1が増えた。がんを増大させると分かった。PD‐L1を減らす対応を取ると、インターフェロンガンマがあってもがんの増殖は止められた。

免疫チェックポイント阻害薬に可能性

 卵巣がんではまずPD-L1が悪さをしており、ここにリンパ球からインターフェロンガンマが出ている状態にあると、さらにがんの増大が加速されることになる。

 最近、免疫チェックポイント阻害薬という薬が登場している。このPD-1やPD-L1を止める仕組みは卵巣がんでも重要になりそうだ。


引用元:
卵巣がんで「PD-L1」が悪さ、インターフェロンガンマがさらに悪さ、京都大学からの報告(Medエッジ)