驚異的な治療が3Dプリンターで実現しそうだ。

 このたび、呼吸が難しくなる重い気管の病気の赤ちゃん3人が、3Dプリンターで作った初めての治療に成功した。つぶれやすい気管を単に補強するだけではなく、吸収される材料によって、ほとんど正常に近い状態まで回復させることができるところが注目される。

 米国ミシガン大学を含む研究グループが、世界的な科学誌サイエンスの姉妹誌、サイエンス・トランスレーショナル・メディシン2015年4月号で報告した。

命にも関わる気管の病気
 赤ちゃん3人は、生まれて間もなく呼吸不全の症状を起こしたり、1年間も人工呼吸器や静脈からの栄養補給を要したりしていた。いずれも重い「気管・気管支軟化症」と診断されていた。

 研究グループによれば、従来、重い場合は呼吸がままならず、助かる見込みはほとんどない病気と見なされてきた。

 今回、研究グループは、3Dプリンターを使った治療に取り組んだ。

 3Dプリンターは、印刷の要領で専用のインクを積み重ねていって、立体的な構造物を作り出す技術だ。これまで例えば、心臓の病気を治すために応用する動きが報告されているほか(心臓手術に「3Dプリンター」、子どもの集中治療室への滞在を数カ月短縮もを参照)、骨折を治療するために、現実の骨になじむ固定具を作り出して、骨を元通りに治す新しい技術も報告されている(骨折治療に変革、骨のCT画像から高速で3Dプリンターで固定ツール、中国グループ開発を参照)。

気道のCTスキャンから作成
 今回についても、気道のCTスキャンの画像に基づいて、3Dプリンターで治療器具(エアウェイ・スプリントと呼ばれる)を印刷して作り出す。

 今回のポイントは、冒頭の通り、生体吸収性の材料を使っている点だろう。うまくいけば、器具は吸収されて気管になじむので、正常な気管に近い状態に「再生」し得るというところが重要だ。

 つぶれやすい気管や気管支を作り出した器具で補強。気道の成長を許容しつつ外部からの圧迫に耐えられるようにする。あらかじめ定めた期間の中で、もともとの気管に吸収されていくと想定している。

 研究グループは、生後3カ月/16カ月/5カ月だった3人の気道の外側に縫合した。

副作用なく気管の機能を回復
 その結果、命に関わる症状をなくすまでの回復を成功させた。

 肺などの合併症も治し、何の副作用も出さなかった。

 治療を受けた子はそれぞれ成長し、3歳/2歳半/17カ月になっている。移植したエアウェイ・スプリントは拡張して、気道の持続的な成長を邪魔せず、遂には人工呼吸器も不要にして、元気に暮らせるようにしている。

 最初に手術を受けた赤ちゃんではスプリントが順調に溶けて、気道はやがて普通に発達すると見られている。

ほかの病気でも応用可能か
 なお、今回の移植は米国食品医薬品局(FDA)から緊急承認を受けた。

 装置の安全性やまれな合併症があるかどうかを探るためにさらなるデータは必要とされる。

 生物吸収性で、組織の成長に合わせられる、個人仕様のこの3D装置は広い用途があると思われる。ほかの病気でも威力を発揮しそうだ。




引用元:
驚異の治療、3Dプリンターを使って赤ちゃんの呼吸を脅かす重病を治し切った(Medエッジ)