今回取り上げるホルモンは、甲状腺に関わるホルモンです。このホルモンは月経周期で変動はしませんが、妊娠すると変動します。

甲状腺は首にある気管の前に位置する臓器です。この甲状腺に関連するホルモンとしては、下垂体から分泌され甲状腺を刺激するTSH(甲状腺刺激ホルモン)と、TSHの刺激で甲状腺から分泌されるT3(トリヨードサイロニン)およびT4(サイロキシン)があります。

T3、T4の大部分は、血清蛋白と結合していますが、実際に直接、体に働く甲状腺ホルモンは、血清蛋白と結合していない遊離T3と遊離T4です。

T3、T4の働きは大きく分けると、次の3つの働きがあると考えられています。

@全身の細胞内で脂肪や糖分を燃やしてエネルギーをつくり出し、生体の熱産生を高める
A交感神経を刺激し、それによって脈が速くなったり、手が震えたりする。
B胎児や小児を正常に成長、発達させる

甲状腺は、全身の代謝を高めるホルモンです。

アメリカ内分泌学会のガイドラインでは、TSHの正常上限値は2.5μIU/mlであるとされています。日本人は海藻をよく食べるので、甲状腺に対する自己抗体がない方では、3.0μIU/mlまでは許容されると考えられますが、2.5μIU/mlを上限としておいた方が無難かもしれません。

この値より高いと甲状腺機能低下症が疑われ、この病気だと妊娠に関連する病気、すなわち不妊症や流早産、妊娠高血圧症、早期破水などの母体の病気の発症と深い関連性があるといわれています。

さらに、胎児に関しても、胎児の知能を含めた発達が大きな影響を及ぼすことが知られています。よって、不妊治療を行う時でも、TSHやT3、T4を測定し、これらの値が正常範囲から逸脱している場合は、妊娠前に正常範囲に入るよう薬を投与します。甲状腺機能低下症では、チラジン®Sが投与されます。妊娠するとその必要量が増えるので、ホルモンを測定しながら増量することがしばしばです。

また、子宮の形や卵管の通過性を評価するための子宮卵管造影検査(HSG)でも、検査後TSHなどの値が変動し、甲状腺機能低下症をきたす場合があります。

このため、HSGの前には必ず甲状腺に関わるホルモン、さらに甲状腺に対する抗体を検査しておき、HSG後すぐに妊娠された方では再度これらのホルモンを検査することが大切になります。


引用元:
不妊の検査