3月下旬、世界保健機関(WHO)は、日本がはしかの「排除」を達成したと認定した。国内に定着したいわゆる土着のウイルスによる感染が3年間ないことが認められたという意味で、関係者は歓迎している。だが日本からはしかがなくなったわけではなく「今後の対策こそ重要だ」ともいう。排除をどう受け止めればいいのだろう。

 ▽重要な一歩

 「最終ゴールの『流行ゼロ』に向けた重要な一歩。目標達成をまずは喜びたい」と話すのは岡部信彦・川崎市健康安全研究所長だ。国内のはしか対策に長く携わり、排除の要件を満たしていることをWHOに報告した厚生労働省の専門家会議の委員長でもある。

 はしかは高熱や発疹などの症状が特徴。原因の麻疹ウイルスは空気感染し感染力が非常に強い。先進国でも患者の千人に1人程度が肺炎や脳炎で死亡するが特別な治療法はなく、2回のワクチン接種による予防が標準的な対策だ。

 WHOは世界規模のはしか制圧を目指している。20150428honki2.jpg日本は当初、2012年の排除が目標だったが果たせず、15年度中の達成を新たな目標としていた。

 ▽対策で激減

 国内のはしか対策が大きく動いたのは06年。1回だった子どもへの定期ワクチン接種が、1歳と小学校入学前1年間の計2回になった。だが07〜08年には10〜20代を中心とする大流行が発生。それを受け、中学1年と高校3年に当たる年齢の子どもも定期接種の対象に加える事業を13年3月まで5年間続けた。

 その結果、08年に1万人を超えていた患者数は09年以降、数百人台に激減。大流行を起こした「D5」型と呼ばれる土着ウイルスは10年5月を最後に検出されず、以降の患者は海外由来のウイルスが原因と確認されている。「日本の中での流行をまずは食い止めることができた。だがここで気を抜いてはいけない」と岡部さんは言う。

 実際、毎年数百人の患者が出ることで大きなリスクにさらされる年齢層がある。1歳未満の赤ちゃんたちだ。20150428honki1.jpg

 感染症に詳しい川崎市の小児科医片岡正さんによると、赤ちゃんは生後半年程度は母親からもらった免疫の力ではしかから守られている。その効果がある間はワクチンを接種しても免疫がつかないため、免疫がほぼ確実に消える1歳を待って接種している。つまり1歳直前の赤ちゃんははしかに最も無防備で、周囲がワクチンで確実に免疫をつけることで彼らを感染から守る必要がある。20150428honki.gif

 ▽怖さ忘れると

 排除達成後に片岡さんが重要だと考えるのは「この状態を維持する大切さを社会の共通認識にしていくことだ」という。片岡さんは保育園の健診などで、親の多忙や経済的困窮といった事情により、決まった時期にワクチンを接種できなかった子どもたちに出会う。

 「そうした例はこれまで『自ら権利を放棄した人』と扱われてきたが、きちんと救済すべきではないか。はしかの発生が減ってみんなが怖さを忘れると、ワクチン接種への関心が薄れる恐れがある。それを放置することの方が危険だと思う」

 日本より15年も早い00年にはしか排除を宣言した米国では昨年末以降、海外から持ち込まれたらしいはしかがカリフォルニア州のディズニーランドを起点に流行し、4月上旬の集計で7州の約150人に広がった。患者の多くはワクチン未接種か接種歴がはっきりしない人だという。

 東京五輪開催の20年に外国人旅行客を現在の1・5倍の2千万人に増やす政府目標を掲げる日本。米国の事例は人ごとではないかもしれない。(共同通信 吉本明美)

引用元:
はしか対策これからが大切 WHOが「排除」認定 ワクチン接種の後押しを(47NEWS)