多摩地域の子どもの医療費助成は23区と比べて遅れている。助成内容は子育て世代がどこに住むかを選ぶ際の理由の一つとなっており、各自治体は財源の確保を課題としている。
■「中3まで無料」要望強く 府中市
府中市は2009年から、小中学生の医療費で所得制限を設けずに全額を助成している。
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拡大不動産会社が府中市内で配るパンフレット。医療費助成などメリットを列挙する
都が07年に小中学生の自己負担分のうち3分の1を助成する制度を始めた。都は所得制限を設けたのに対し、府中市は当初から制限しなかった。09年に都は助成を拡大し、所得制限はあるものの自己負担分を上限200円とした。だが、市は所得制限しないまま全額助成に移行した。
「07年当時、多摩地域で所得制限がなかったのは府中市だけ」と市子育て支援課。市は1973年、都に先立って乳幼児の医療費助成を始めた。04年に未就学児の所得制限を撤廃したところ、中学生までの助成拡大を求める市民の要望が強まった。
今月、秋田県に暮らし府中市に自宅のある会社員、前田崇志さん(37)が子育て支援課の窓口を訪れた。家族が府中市に移るため、長男(6)の児童手当の転入手続きをした。「府中市が中学生まで医療費無料というのは有名」といい、長男が来春小学生になる前に妻がこの街を選んだという。
市は毎年、子育て支援制度や保育所・幼稚園の情報をまとめた冊子「子育てのたまて箱」を約1200部作成、出産届を出した市民らに配る。100ページ超で、病院など約70件の広告で製作費の一部を賄う。市内には東芝やNECなど大企業の事業所があり、平和島競艇(大田区)を主催するなど近隣自治体に比べて財源に恵まれる。それでも財政状況は厳しく、所得制限をするべきだという議論もある。子育て支援課は「市民から『無料で助かった』という声が届く」といい、制限を設けない方針だ。
(鬼頭恒成)
■所得制限、割れる判断 国立・八王子市
国立市は今年度、小学1〜3年の所得制限を廃止。10月から1回200円の自己負担で医療を受けられるようになる。「所得制限のない区部と多摩地域とでは差がある」と制限撤廃を求める声があり、市は罹患(りかん)率の高い小学低学年生を対象に助成を拡大し、子育て世代や転入希望者への後押しにしたい考えだ。
小学4年から保育園児まで男の子4人を育てる会社員赤根大吾さん(40)にとって子育て支援は切実だ。長男が7歳のころ、夜になると腹痛に悩まされ、近隣の府中市内の病院に駆け込んでいた。「手持ちの現金は大丈夫だろうか」。病院に向かうのをためらいそうになったこともある。
9年前、市内に一軒家を買った。職場が羽村市にある赤根さんは青梅線沿線を視野に入れていたが、文教都市の環境を気に入っている妻(41)の意見が通った。
選挙が始まったが、候補者の公約には注文を付けたくなる。「『子育て支援します』って、具体的にはどんなことなんだろう」
都が始めた07年から、八王子市は所得制限を設けている。高校3年と小学6年の息子がいる主婦(43)は、長男が小学生時代は助成対象だったが、次男が小学校に入ると会社員の夫(42)の所得が限度額を超えた。
「小学生でも大きな病気や骨折といったけがもあるのに」。心配は募る。助成の手厚さを理由に近隣市に引っ越した知人もいる。通院を繰り返せば家計に響いてくる。「せめて小学校卒業までは限度を設けないでほしい」と願う。
多摩地域26市は毎年のように都や国に助成制度の改善を要望しているが、都などから色よい回答はない。八王子市議会では3月に所得制限の廃止を求める質疑があったが、市は都全体として広域的な対応が必要、と回答した。
市の担当者は「各市バラバラな対応が子どもを取り合うような形になってしまわないか。広域的な連携こそ少子化対策になるのではないか」と話す。
(前田伸也、遠田寛生)
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■各自治体の医療費助成の現状(2月1日現在、都の資料などから)
対象上限学年 所得制限なし 自己負担なし
八王子市 中3
立川市 中3
武蔵野市 中3 ○ ○
三鷹市 中3
青梅市 中3 ○
府中市 中3 ○ ○
昭島市 中3
調布市 中3
町田市 中3
小金井市 中3
小平市 中3
日野市 中3
東村山市 中3
国分寺市 中3
国立市 中3
福生市 中3 ○
狛江市 中3
東大和市 中3
清瀬市 中3
東久留米市 中3
武蔵村山市 中3
多摩市 中3
稲城市 中3
羽村市 中3 ○
あきる野市 中3
西東京市 中3 ○
瑞穂町 中3
日の出町 高3 ○ ○
奥多摩町 高3 ○ ○
檜原村 中3 ○ ○
(朝日新聞 2015年4月24日掲載)
引用元:
医療費助成、どこまで 子育て世代の居住に影響 東京都内でも地域差