不妊の検査

卵胞発育にはこれらのホルモンは重要ですが、一回測定すればあとは測定しなくていいわけではありません。いろいろな影響を受けて絶えず変化するので、月経周期ごとに卵胞の発育に合わせて測定し、発育を評価します。
特に排卵誘発剤を使用しているときは、測定する回数も増えます。保険では1回の検査しか認められませんが、卵胞の発育状態を知るにはとても大切なので、自費検査として行っています。
卵胞が発育しない人、発育しにくい人で、FSHやLHがとても高い人がいます。正常値は一桁中ごろの値ですが、この数値が20 mIU/ml以上の人がいます。これは、卵巣で卵胞の発育がないため、脳からのホルモン指令が大きくなり、卵巣をより強く刺激して卵胞発育を促そうとしているのです。
強い刺激でようやく卵胞が発育するときもありますが、そのような卵胞は質が悪いことも多く、採卵してみると、卵胞内に卵子が見つからない場合も多くあります。また、FSHがさらに高くなると、全然卵胞が発育しなくなります。
卵巣における卵胞の数が少なくなるために、脳からのホルモン指令が大きくなるのですが、それ以外に、このFSHの高値はそれ自体、卵胞の発育を妨げてしまい、悪循環をひきおこしています。
このようなホルモン状態の時、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストラジオール;E2)を外部から投与すると、脳からのFSHが下がり至適な範囲の値に落ち着かせ悪循環を断ち切ることができます。このことにより、卵巣での卵胞発育環境を改善します。この時に、脳からのFSHや体外から投与するE2がどの範囲にあるのかを頻回に測定し評価することになります。
このように書くと、卵巣に卵胞さえあれば、いかにも卵胞の発育はコントロールできるように思えます。しかし、卵胞の発育には約3カ月かかり、卵胞発育の初期はFSHやLHに反応しない時期が2カ月以上あります。
胎児の時に貯蔵された卵胞が少しずつ発育するのですが、この初期発育に関わる遺伝子がいくつか発見されていますが、まだこの時期の発育をコントロールする医療的な方法は見つかっていません。すなわち、この卵胞発育の初期は「卵胞任せ」ということになり、検査方法や治療法がないのが現状です。
20歳代の若い時はFSHやLHに反応するぐらいに発育する卵胞は1月経周期当たり、十数個ありますが、40歳代になると2〜3個となります。ですので、40歳代だと治療に反応する卵胞数が少なく治療効果も小さくなります。卵胞初期の発育をコントロールするホルモンが一般に利用できるようになるにはまだ数十年かかると考えています。


齊藤英和 (さいとう・ひでかず)

1953年、東京都生まれ。専門は生殖医学、不妊治療。日本産婦人科学会・倫理委員会・登録調査小委員会委員長。長年、不妊治療の現場に携わっていく中で、初診される患者の年齢がどんどん上がってくることに危機感を抱き、大学などで加齢による妊娠力の低下や、高齢出産のリスクについての啓発活動を始める。白河桃子さんとの共著で「妊活バイブル」、「『産む』と『働く』の教科書」(いずれも講談社)がある。内閣府の「少子化危機突破タスクフォース第二期」座長(2013−2014)。現在、内閣府「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」委員。


引用元:
不妊の検査【apital.asahi】