今回は、妊娠・出産と糖尿病について説明します。
糖尿病に関しては女性ならではの配慮が必要な点があります。妊娠・出産以外にも、女性ホルモンの血糖に対する影響▽インスリン抵抗性を起こしやすい多嚢(のう)胞性卵巣症候群(PCOS)の合併▽思春期女性特有の心理状態、やせ願望▽高血糖時に生じやすいカンジタ膣(ちつ)炎などの婦人科系感染症▽エネルギー代謝に影響を及ぼす甲状腺疾患が女性に多いこと、などが挙げられます。
血糖値が高いと、お母さんはもちろん、赤ちゃんに問題が起こるリスクが高まります。先天異常(奇形など)発生率は、お母さんが糖尿病でない場合2%程度ですが、糖尿病で血糖コントロールが悪いと、それが10倍以上になるといわれています。流産や早産のほか、けいれん発作、脳出血などを起こす妊娠高血圧症候群も生じやすくなります。
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糖尿病であるお母さんの子宮内環境は、肥満、2型糖尿病、高血圧、運動障害、知能障害といった形で、赤ちゃんが成人した後にもさまざま影響を及ぼす(長期的影響)といわれています。妊娠前もですが、妊娠中は特に血糖管理が大切です。
若い時に1型糖尿病を発症した女性が出産を望む場合、妊娠前のインスリン治療や血糖の自己測定、さらに血糖値を管理したうえでの計画妊娠の大切さが指導されます。
しかし、妊娠時は食事や胎盤ホルモンの影響で血糖が変動しやすく、非妊娠時より厳密な管理が必要となります。2型糖尿病では、妊娠前にインスリンではなく内服薬で治療されることが多く、それらの薬物療法は赤ちゃんに影響するものが多いため、インスリンへの変更が必要です。
もちろん血糖自己測定による厳密な管理が必要です。妊娠希望の糖尿病の女性はあらかじめ主治医の先生と十分に相談しておくことが大切です。妊娠前から糖尿病である場合と妊娠中に確実な糖尿病と診断された場合とを合わせて「糖尿病合併妊娠」といいます。
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<妊娠糖尿病の診断基準>
【定義】
妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常
【診断基準】
75g糖負荷試験において次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
(1)空腹時血糖値≧92mg/dl
(2)1時間値 ≧180mg/dl
(3)2時間値 ≧153mg/dl
ただし臨床診断において糖尿病と診断されるものは除外する。
(糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告2010年)
妊娠中に血糖値が問題となるもう一つの例として、「妊娠糖尿病」があります。
糖尿病とまでは言えないが、母体の血糖値が少し高い状態(耐糖能異常といいます)になると、赤ちゃんの過剰発育が起こりやすく、出産時にさまざまなトラブルが生じる▽出産後にお母さんの血糖値異常がいったん改善しても、しばらくすると糖尿病になるリスクが高い――という事実を踏まえ、2010年に診断基準が定められました=表。
妊娠糖尿病になるリスクのある人は、(1)尿糖が陽性(2)血縁に糖尿病の人がいる(3)肥満(4)妊娠中にずいぶん体重が増えた(5)巨大児(4千グラム以上)を出産したことがある(6)高齢妊娠――などです。
特に、(2)や(3)に当てはまる人は妊娠初期から血糖値を調べ、「随時血糖値100mg/dl以上」の場合、砂糖水を飲んで前後の血糖値を調べる「75g糖負荷試験」を実施する必要があります。また、妊娠初期の高血糖は赤ちゃんの先天異常を招きやすいため、(1)〜(6)にあてはまる人は妊娠する前にも糖尿病の検査をしておくとよいでしょう。
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妊娠糖尿病、糖尿病合併妊娠とも、妊娠中の血糖コントロールは厳密に行います。朝食前血糖値が70〜100mg/dl、食後2時間血糖値120mg/dl未満、HbA1c(国際基準)6・2%未満が目標です。
(弘前大学大学院保健学研究科 医療生命科学領域教授 丹藤雄介)
引用元:
妊娠・出産とリスク よく知れば怖くない糖尿病の話(asahi.com )