ダウン症の娘の成長の軌跡を描く「『ホーホー』の詩ができるまで ダウン症児、こころ育ての10年」を、社会人類学者で国立民族学博物館(大阪府吹田市)教授の信田(のぶた)敏宏さん(46)が著した。ダウン症の人がその人らしく生きられるように――そんな願いをこめて。

 信田さんが「しーちゃん」と呼ぶ長女静香さん(11)は2003年10月に生まれた。出生後の染色体検査で普通の人より染色体が1本多いダウン症であることがわかった。

 体にいろいろな障害が起きやすい。筋力が弱く成長もゆっくりとしている。「この子は生きていけるのだろうか」「話せないのだろうか」。信田さんと妻知美さん(45)は不安に襲われた。

 支えになったのは知美さんの父で画家の大熊峻(しゅん)さんの言葉だ。

 「この子にはハンディがあるかもしれへんけど、どんなすばらしい人生が待っているかわからへん。悲観したらあかんで。人生は良い方、良い方に考えていかなあかんで」

 しーちゃんを育てるにあたって、信田さん夫妻は二つのことを心がけた。

 一つは「言葉」。しーちゃんにたくさん話しかけた。単語の羅列はレッドカード。たとえば「新聞!」ではなく「新聞をとってください」と、きちんと文章にして話すように努めた。

 一つは「心」。親子で一緒に楽しい、うれしい、面白いなど感動を分かち合えるよう工夫した。しーちゃんが興味を…「続きはログイン・ご購入後に読めます」


引用元:
ダウン症の子、自分らしく 入選の詩、できるまで――成長の物語出版