全国から自殺寸前の人がやってきてそこで「食」をもてなされると活力を得て帰っていく。まさに「ふるさと」のような地が青森・岩木山麓にある『森のイスキア』だ。
『森のイスキア』主宰・佐藤初女氏のところへは、女優・大竹しのぶさんや、総理大臣夫人・安倍昭恵さんなど数多くの有名人が「おむすび」を学びにくる。
1995年公開、龍村仁監督『地球交響曲<ガイアシンフォニー>第二番』でその活躍が世界中で注目された佐藤初女氏。海外からの講演依頼も多数。現在も精力的に講演活動中だ。
その初女さんが93歳の集大成書籍『限りなく透明に凜として生きる―「日本のマザー・テレサ」が明かす幸せの光―』を発刊(本記事巻末に購入者限定特典告知あり)。出版記念講演会も1200名満員になったという。
今、初女さんは「食」を通じて何を伝えたいのだろうか。

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● おいしくないと、おなかは満たされても 心は満たされません

 春になると、進学や就職など環境が大きく変わり、子どもたちも悩んでいます。
 子どものことは両親も考えているし、先生も考えている。一人の子に教えることが多くて、子どもはまいっているんですね。

 「学校に行きたくない」という子が出てきて、お母さんは「どうしたものでしょうか」と『森のイスキア』に見えます。

 よくよく話を聞いてみると、やっぱり食べ物が満たされていない。お母さんは忙しいから、出来合いのものを食べさせているんです。
 でも、出来合いのものには心が入っていないからおいしくない。おなかは満たされても心は満たされていないわけですね。

 毎年、卒業式におむすびの握り方を教えている小学校があります。

 ある年の打合せに男性のPTA会長さんと女性の校長先生が見えました。
 当日の段取りや人数などをひととおり事務的な話が終わったあと、そのPTA会長が「うちで困ったことがある」と話し始めました。
「子どもが学校に行きたくない」と言うのだと。

 お父さんが困ったと思っているところに、ある朝、子どもがお母さんに「何かつくって」とて言ったそうです。
「何でもいいからつくって、早く早く」と。

 学校に行く前だからお母さんもあわてて何か一品つくったけれど、ひと口食べただけで、あとは食べなかったんですって。

 どうして食べないのか、子どもがわがままをしているように見えたけれど、おいしくなかったからいけなかった。ただつくるのではなく、子どもがいまどんなものを食べたいのか喜んでくれるようにつくればよかったと、あとからお母さんは気づいたそうです。
● 1歳の子でも、味はしっかりわかる

 ただ子どもに食欲がないというのではなく、なぜそうなるのかというところにいかないといけないということですね。
 食べ物ぐらい体にぴんと伝わるものはありませんから、やっぱりおいしくつくることが大事なんですね。

 1歳の子であっても味はしっかりと覚えていますよ。好きなものは食べるけれど、きらいなものは食べない。離乳食を食べ始めたばかりの赤ちゃんでも、おいしくできていないものは舌で押し出します。味をしっかりとわかっているんですね。

 あるとき、離乳期のお母さんに「これから忙しくなるね」と言ったら、「全部売っているんだから大丈夫」と言って瓶詰めになった離乳食を見せてくれました。

 でも、買った離乳食で育つのとお母さんがつくった離乳食で育つのでは赤ちゃんは違ってきます。
 ごはんで育った赤ちゃんはたくましい感じになります。だからお母さんは離乳食からおいしくつくってあげてほしい。お母さんがわかってやっていると、赤ちゃんはわかってすくすく育ちますよ。

 なかなかそういったことを大人のほうで素直に受け入れられないことが多いですよ。
「子どもに好き嫌いが多い」「わたしは忙しくてできない」と言っていれば、いつまでもできません。

● 食材を最大限生かす3つの視点

 でも、お母さんが素直に受けて、そのようにやれば変わってきます。変わってきたときに家の空気も変わってくるのです。

  「好き嫌いがある」というのは、よく出てくる質問ですが、そこでわたしが「おいしくできていますか? 」と聞くと、「できていない」って。周りと顔を見合わせてくすくす笑っているんですね。
 おいしくつくるには特別な素材を取り寄せてやるのではなく、まず旬のもの、新鮮なもの、その土地でできた食材を選ぶことが大切。

 3点をもとにして、その食材が生かされるように調理するとおいしくできます。

  「忙しくて時間をかけて料理ができない」というのは働く人によくある問題ですが、忙しいときは、前もって準備しておくといいんです。

 そのときに食べるものを、そのときつくるのは難しいので、あらかじめ野菜をゆがいたり、魚に味をつけたりしておくと、あとの段取りが断然違ってきます。

 煮物やつくだ煮などの常備菜が冷蔵庫にあると、それをまず出して、それからつくってというふうにできますよ。
 忙しいということにとらわれず、その中から何ができるだろうかと考えると何かが見つかります。
● 親子で料理すれば、ますます楽しい

  「料理に時間がかかって子どもとすごす時間がない」と悩むお母さんもいます。
 こういう場合は、子どもに手伝ってもらってやるといいですね。一緒に料理をすると、お互いにさまざまに交流できます。

 ある雑誌で子どもと料理をする企画があり、小学生のお子さん2人と一緒に「にんじんの白和え」をつくったんです。にんじんの皮むきから始めたのですが、

  「もし、にんじんが自分だったら皮むき器でざっとむかれると痛いよね。
 だから、わたしは皮むき器を使わないで包丁でなるべく薄くていねいに皮をむくんだよ」

 と話すと、時間はかかりましたけれど、きちっとやりました。

 子どもは、こうしてきちんとやるからきれいにできるということがわかるのですね。
 そういうふうにすると、料理がどんどん好きになります。

 包丁を危ないといって使わせないお母さんもいますが、子どもの手に合う小さなナイフを用意してやれば大きなケガをすることはありません。
 それで失敗したとしても尊い経験になりますから、お母さんは危ないといってとりあげず、何でもやらせてみることですね。

 あるお父さんが講演会で「わたしの体験ですが……」と話してくれたことは、会社帰りにふと商店街の店先で七輪を見つけたんですって。

 それで、さっそく買って家に帰って、子どもと炭で火を起こすところから始めて、魚を焼いて食べたそうです。
 手間はかかったけれど、子どもと一緒にやって、それがとっても楽しくて、親子の絆が強まってよかったって。うれしそうに話してくださいました。

● “いのちのうつしかえ”の体験を 子どもたちに

 いま、全国あちこちでおむすび講習会をやっていますが、おむすびを食べたことのない子がいます。買ったおむすびは食べたことがあるけれど、人が握ったものはないって。
 それで講習会で一生懸命握って覚えているんですね。それをうちに帰って家族のためにつくってあげたりして。体験を通して覚えたことが生活のすべてに入っていくわけです。

 緑の野菜をゆがいたとき、これまで以上に緑が鮮やかな緑に変わる瞬間があります。

 このときに茎を切ってみると透き通っている。この透明になった瞬間が“いのちのうつしかえ”であり、このときに食べるのがいちばんおいしい。
 単純なことのようですが、こういったことも親子で体験してみると、子どものほうも何かを感じるわけです。

 わたしたちは食べないと生きていけません。教育というのは、常に食べることと一緒になって考えていくことが大事だと思うのです。
 そして食べることを通して、子どもさんと一緒に「透明」ということも考えてほしいのです。





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● 93歳の集大成書籍への想い

 このたび、たくさんの方にお世話になりながら、わたしがこの20年あたためてきた「透明」をテーマした書籍『限りなく透明に凜として生きる』 を発刊しました。

 ずっと、このことを話したかったの
 ずっと、このことを書きたかったの
 ずっと、このことを伝えたかったの
 透明のこと。

 いちばん大事なのは、待つことです。
 母性に立ち返るとき、問題は自然に解決します。
「いのちのうつしかえ」のとき、人も透明になるのです。
 
 透明だと、ほんとうに、生きやすい。
 何かになろうとしなくても、
 それは自分の中にすでにあるものです。
 透明になって真実に生きていれば、
 それがいつか必ず真実となってあらわれます。
 だからわたしたちに今できることは、
 ただ精一杯、真面目にていねいに生きていく、
 これだけだと思うのです。

 よろしければ、一度お読みいただけると幸いです。
(次回へつづく)

<著者プロフィール>
佐藤初女(さとう・はつめ)
1921年青森県生まれ。青森技芸学院(現・青森明の星高等学校)卒業。小学校教員を経て、1979年より弘前染色工房を主宰。老人ホームの後援会や弘前カトリック教会での奉仕活動を母体に、1983年、自宅を開放して『弘前イスキア』を開設。1992年には岩木山麓に『森のイスキア』を開く。助けを求めるすべての人を無条件に受け入れ、食事と生活をともにする。病気や苦しみなど、様々な悩みを抱える人々の心に耳を傾け、「日本のマザー・テレサ」とも呼ばれる。1995年に公開された龍村仁監督の映画『地球交響曲<ガイアシンフォニー>第二番』で活動が全世界で紹介され、シンガポール、ベルギーほか国内外でも精力的に講演会を行う。日本各地で「おむすび講習会」を開くとすぐ満員になる盛況ぶり。アメリカ国際ソロプチミスト協会賞 国際ソロプチミスト女性ボランティア賞、第48回東奥賞受賞。2013年11月の「世界の平和を祈る祭典 in 日本平」でキリスト教代表で登壇。チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ法王と初対面。その際、おむすびをふるまう。『おむすびの祈り』『いのちの森の台所』(以上、集英社)、『朝一番のおいしいにおい』(女子パウロ会)、『愛蔵版 初女さんのお料理』(主婦の友社)、『「いのち」を養う食』(講談社)など著書多数。
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佐藤初女


引用元:
なぜ、子育ての悩みはすべて「食」で解決するのか?(ダイヤモンド・オンライン)