乳幼児のトイレトレーニングで、「うんちが出ない」と心配する親は多い。子どもがなぜ便秘になってしまうのか、便秘を解消するにはどうすればいいか。乳幼児慢性便秘症外来がある名古屋市立西部医療センター(名古屋市北区)院長で小児科医の鈴木悟さん(60)に聞いた。

◆緊張させない環境を
 −便秘の原因は。

 離乳食を食べ始める生後六カ月前後の一時期に、便秘になりやすい。胃腸機能が未熟で、母乳やミルクに比べて水分量が少なくなりがちだから。果汁などでうまく水分を取らせれば解消します。まれに、肛門の異常や、腸の動きが低下する病気などが原因の場合もあるので、食欲低下や嘔吐(おうと)を伴うひどい便秘なら病院で診察を受けてください。

 最も多いのが二、三歳でおむつを外してトイレトレーニングを始める幼児期前半の便秘です。おむつを外さなければと、母親が一生懸命になる。そのプレッシャーが子どもに伝わってしまうのが原因ですね。

 −ストレスですか。

 子どもは母親の表情をよく見ています。母親の焦りを感じ取って、ストレスを抱える。すると、腸管の動きが止まってしまいます。大人でも、旅行中など非日常のストレスを感じて便秘になります。

 「うんちは出たの」「どうして出ないの」と問いかけるほど、子どもはどんどん緊張します。便が腸にたまっても便意を感じにくくなり、さらに便がたまる悪循環になってしまいます。

 −うまいトイレトレーニングのこつは。

 食後に便座に座らせる方法が、よく知られています。食べ物が胃に入ると便意を引き起こす胃・大腸反射を利用しています。


 例えば、父親がトイレに付き合い、子どもを便器に座らせたまま一緒に遊ぶんです。手遊びをしたり、ボールを投げ合ったり。絵本を見せて読んでもいい。便が出なくても、トイレに行くのが楽しいと思わせることです。赤ちゃんがよくお風呂でうんちをしてしまうのは、温かくて気持ちいいから。緊張を与えず、リラックスできる環境づくりが大切です。

 ここで、「うんちを出さないといけない」とプレッシャーを与えてはいけません。トイレに行くことを嫌がるようになります。

 −便秘になったときは。

 便が三日以上出なかったり、一週間に二回以下のときは便秘。硬くて出にくい状態になります。水分や食物繊維は排便を促しますが、便を出すために余計に取らせようとすると、プレッシャーを与えて逆効果になることも。普通の食生活のバランスで良いと思います。

 病院の便秘の治療では、液体の緩下剤(かんげざい)を使います。量を調整して排便を促し、少しずつ排便習慣を身につけてもらいます。「とにかく、うんちを出して」という気持ちが強い母親もいますが、慌てずにゆっくり改善させていくようアドバイスしています。

 子どもの強い感受性を、便秘の原因にしてしまうなんてもったいない。その感受性をプラスに生かすような子育てをしたいですね。

(林勝)



引用元:
<こうしたら> 乳幼児期の便秘 (中日新聞)