「子ども・子育て支援新制度」が1日、スタートした。新たな保育サービスの導入や施策の中身を自治体に大きく委ねるなど、子育てを巡る状況が変わろうとしている。各地でどんなことが起きているのか。制度の仕組みとともに紹介する。

 ●連携施設は「未定」

 「おはようございまーす」。NPO法人「メリーユー」が運営する小規模保育「保育ルームキューティー北山田」(横浜市都筑区)に、子どもたちの元気な声が響いた。マンションの一角にあり、0〜2歳の19人が通う。室内で体操をした後は、近所の公園に散歩に行くのが日課だ。

 小規模保育は、新制度で新たに導入された。定員6〜19人で、認可保育所のような広い用地の確保などが必要なく、開設しやすいのも特徴。待機児童解消の切り札として期待されている。同NPOの柳牧子理事長は「少人数なので、保育士も子どもたちに目を行き届かせることができ、手厚い保育ができる」と胸を張る。

 新制度では、こうした小規模保育をはじめとする、少人数で0〜2歳の子どもを預かる「地域型保育」を国の補助対象として新設した。このほか「家庭的保育」(保育ママ、定員5人以下)▽障害や疾患などで個別のケアが必要な場合に、1対1で保護者の自宅で保育を行う「居宅訪問型保育」−−などがあり、ニーズに応じたきめ細かいケアや、待機児童解消を目指す考えだ。

 待機児童対策を推進する横浜市では4月から、小規模保育だけで33カ所を新規開設し、535人分定員を増やす。

 しかし、地域型保育を利用できるのは原則3歳未満児。3歳以降は別な保育施設に移る必要がある。事業者には、受け入れ先となる連携施設を確保するよう求めているが、5年間の経過措置が設けられているため、未定の所が多い。保護者からは「本当に移る先があるのか」と不安の声も上がっている。自治体担当者は「『3歳児待機』を増やさないよう連携先の確保が課題」と口をそろえる。

 ●お墨付きでも落選

 新制度では、保育施設の入所申し込みの際、保育が必要かどうかを自治体が証明する「保育認定」が必要だ。親の就労状況や子どもの年齢などで1〜3号までの3種類の認定があり、それにより利用できる施設が決まる。

 本来、認定を受ければ、何らかの公的サービスを利用できる保育の権利が発生する。しかし「お墨付き」をもらっても、保育所やサービスが不足しているために、実際には利用できない事態が広がっている。

 認可保育所の入所の可否が発表された3月、首都圏各地で、認可保育所に入れなかった子どもの保護者らによる、自治体に対する異議申し立てが次々と行われた。

 「育児休業明けでも認可に入れなかった。無認可の保育施設は保育料も高く、保育内容にも不安がある。新制度の恩恵は何もなかった」。6カ月の長男のため、認可保育所に入所申請した、東京都目黒区の会社員の女性(40)は憤る。

 4月から長男を認可保育所に預けて職場復帰する予定だった。しかし認可には希望者が殺到し、選考に落ちた。区からは都の保育施設の認証保育所を案内されたが、遠方のため通うのは現実的ではなかった。やむをえず、無認可保育所に預けて復帰するが、保育料は最低毎月7万5000円で認可より高く、公的補助も全くない。

 同区で4月入所の認可保育所に申し込んだ人は1892人(1次選考時点)。うち6割の1116人が入れなかった。申し込んだ人は、前年同期比で約150人増えた。

 新制度では市町村に対し、子ども・子育て支援事業の5カ年計画を策定するよう求めている。計画では、現在の地域の教育や保育・子育て支援事業の利用状況のほか、「将来は子どもを預け働きたい」という潜在的ニーズも含めた保育・子育て支援の必要量(量の見込み)を把握し、それに見合ったサービスの確保策や実施時期などを定める。

 だが、もともと待機児童の多い地域では、計画を立ててもその通りに進んでいない。「土地を確保できない」などの理由で認可保育所を増やせないからだ。

 全国で待機児童が最も多い世田谷区。この4月には新たに認可保育所10カ所、認証保育所2カ所が開園し、地域型保育と合わせ定員を約1300人分増やした。しかし、認可利用の1次選考では、前年比812人増の6175人が申し込み、半数以上にあたる3416人が入れなかった。

 区では民間事業者が建設用地を探してきた場合、賃料を20年間補助したり、不動産取引に詳しい専門家を非常勤職員で配置したりするなど、あの手この手で対策を試みるが、待機児童を解消する道のりはなお遠い。

 ●質の低下を懸念

 保育定員の確保という「量」が優先される中、子どものための保育の「質」がないがしろにされないか、懸念の声も上がる。「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんは「現状は待機児童もまだ多く、保護者は園を選べない状況にある。自治体は保育の整備責任を果たしつつ、適切な事業者を選定し、質を落とさないよう指導、監督していく責任がある」と話す。【細川貴代、写真も】



引用元:
Listening:<変わる>子育て支援制度/上 3歳になったら行き場なし? (毎日新聞)