四月開始の子ども・子育て支援新制度は、未就学児の預け先を増やし、待機児童を解消するのが主な目的だ。ただ、待機児童の数え方は自治体ごとに違う。厚生労働省は一月、待機児童の新たな定義を示したものの、自治体の判断に委ねる部分を残した。これでは保護者のニーズが尊重されず、状況は改善されないと疑問視する声もある。

◆自治体により判断に差
 「いただきまーす」。名古屋市名東区の認可外保育施設「ファミリーズ」で昼食の用意が整うと、子どもたちは一斉に手を合わせた。新制度の小規模保育として、四月に認可外から認可事業となる。経営者で「認可外保育連絡評議会 名古屋」代表の佐藤嘉高(よしたか)さん(41)は「認可で問い合わせも増えている。今後も保育を充実させたい」と意気込む。

 新制度では、この施設のように待機児童の受け入れ先として認可される保育事業が増える。働く女性の増加などで保育需要は高まっており、厚労省などの調査によると、待機児童解消の目標とされる二〇一七年度は、ゼロ〜二歳児だけでも保育の受け皿は約五万人分も不足する=グラフ。ただ、待機児童の数え方は自治体ごとに違うため、実態はもっと多い可能性がある。

 厚労省は新制度の導入に伴い、待機児童の考え方を「自治体から保育の必要性の認定を受け、認可保育所や認定こども園、地域型保育へ申し込んでいるが、入所していない児童」と定義し直した。従来、保育の必要性は保護者が「働いているかどうか」が基準で、国は求職活動中を認めなかった。新制度は求職中の場合も保育の必要性を認め、待機児童に含めることにしたものの、課題は多い。求職中かどうかが分かりにくいためで、自治体ごとに対応に差が出そうだ。

 横浜市はハローワークに月一回以上通うことを求職中の目安にする。「自宅でも求職活動はできるが、それも待機児童に含めるかどうか慎重に見極めたい。場合によっては含めないこともある」と市の担当者。

 さらに新定義では、保育所に入所できず育休を延長した場合、「待機児童数に含めないことができる」という表現になった。このケースは現在、東京都世田谷区などは待機児童に含め、名古屋市や大阪市などは除外している。世田谷区は「入所できず育休を延長した人は保育ニーズが高い。含めないと保育整備計画に影響が出る」と主張する。


 昨年五月に「待機児童ゼロ」と公表した名古屋市。育休延長者のほか、希望する保育所に入れず預けていない人なども除外され、隠れ“待機児童”は七百五十六人に上った。市子ども青少年局保育部主幹の嶋久美子さんは「含めなくても保育を希望する人数などは把握し、きめ細かく入所調整をしている」と説明する。

 また、保育所を利用できても希望する場所でないため、不満を抱く保護者も多い。愛知県大府市の大学講師の男性(33)は、自宅から徒歩圏内の保育所を希望したが、車で三十分かかる郊外しか空きがなかった。「名古屋の職場まで二倍の二時間もかかる。会議で遅くなるときの対応を考えないと」と話す。

 待機児童の数え方について、厚労省は「できるだけ統一基準になるよう努力した」と話すが、保育問題に詳しい日本福祉大准教授の中村強士(つよし)さん(41)は「国が明確な基準を示し、市町村が責任を持って決めるべきだ。その場しのぎの対応では実態把握が、ますます難しくなる」と指摘している。



引用元:
<どうなるの?子育て支援> 待機児童の数え方(中日新聞)