大規模な災害が起きて長期間、停電になっても船や電気自動車から電源を確保し子どもたちの安全を守ろうという保育所が、全国で初めて東京・江東区に完成しました。
社会福祉法人が運営するこの保育所は定員およそ200人で、来月1日のオープンを前に26日、関係者150人が参加して式典が行われました。
保育所は、クルーザー会社やタクシー会社と協定を結び、災害で停電が起きたときには、発電機を備えた船や電気自動車が保育所裏の運河や駐車場に向かうということです。そして、園庭にある新たに開発された「船舶用」の電圧を「家庭用」に変換する装置まで電気コードをつないで、電気を供給していく仕組みで、小型のクルーザーならば、保育室などで1日に使う電気量の2週間分を賄えるということです。
26日は、地元の子どもたちが歌や踊りを披露して開所を祝い、船と電気自動車から電気を供給する様子が披露されました。
東日本大震災では、多くの保育所で保護者がなかなか迎えに来られず、停電するなか、寒さや暗闇などを我慢し、体調を崩す子も出たということで、鈴木綾子園長は、「停電で暗くなると子どもが不安になるので、電気で明かりがともせれば、保育所で落ち着いて安全に避難することができ、子どもも保護者も安心できると思います」と話していました。 .”船の電力”活用を今回の電気の供給システムを考えた東京海洋大学大学院の刑部真弘教授によりますと、災害時に船の電力を生かそうという発想は、これまであまりなかったということです。
船には、航海中に使う照明や計器類、それに、レーダーなど電気を必要とする設備が多くあります。
このため、船には発電機が搭載され、燃料を燃やしながら発電を行っていて、一般家庭に換算すると、小型のイカ釣り漁船なら500世帯分の電気を2週間以上、賄うことができるということです。
さらに、船からの電気の供給は大規模な災害で道路が寸断され、電源車などが近づけなくなった場合、海や川の近くであれば可能だということです。
東日本大震災では、沿岸部の陸地は停電で真っ暗でしたが、沖に避難した船は明かりをともしていました。
刑部教授は、「水陸両方向からの電気の供給ルートがあれば、交通網の被害状況に応じて使い分けることができ、大きな効果を発揮する」と話しています。保育所にはさまざまな備蓄保育所は収容人数が少ないことなどから避難所に指定されているところは少ないということです。
避難所に指定されると、自治体などによって、▽自家発電機や▽防災無線などが優先的に整備されていき、災害時に、指定されていない保育所の子どもたちは、原則として、保育所から指定された避難所に移ることになります。
しかし、保育所には、ミルクやオムツ、それに、乳幼児のアレルギー対応食品など、避難所には、なかなか備えられていないものもふだんから置いてあることから、専門家は、「電源確保などの防災対策を整えれば、乳幼児にとっては慣れた場所で避難できるので、ストレスを小さくできる」と話しています。

引用元:
災害に強い保育所 船から電源確保 (NHK)