生まれたばかりの赤ちゃんに先天性の病気がないかを調べる検査「新生児マススクリーニング」が、昨年4月から全国で新しい分析法に切り替わった。数滴の血液からわかる病気が、それまでの6疾患から19疾患に増えた。発症前に治療を始めることで障害を防ぐ効果が期待されている。

新生児マススクリーニングの流れ(ト拡大表示リンク有り)

 東京都内の女性(34)は2013年11月、長男を病院で出産した。生後5日目、長男はかかとから採血された。新生児マススクリーニングで、ごく少量の血液をしみこませた濾紙(ろし)が検査機関に送られた。分析には都が先行導入していた新しい方法が用いられた。
 母子そろって退院して数日後、病院からの連絡で長男は再び採血された。その結果、病気が疑われた。紹介された国立成育医療研究センター病院に検査入院し、「グルタル酸血症1型」と確認された。
 この病気は、有機酸という物質が体内にたまる有機酸代謝異常症の一つ。新生児から3歳くらいまでに発症することが多く、重症化すると脳や神経に障害を起こす恐れがある。母乳とミルクを1日400ミリリットルに制限し、あとは原因物質を取り除いた特殊なミルクにした。有機酸を体外に出す薬も飲み始めた。
 1歳になった長男は、発達は良好だ。月1回、病院で体調のチェックを受けている。今年2月には初めて家族で温泉旅行をした。女性は「滑り台や車が大好き。食事制限や感染予防のための外出制限はあっても、ほかの子と変わらない。ほっとしています」と語る。
 新生児マススクリーニングは、障害が出たり命を脅かしたりする可能性のある先天性の病気を見つけ、発症や障害を防ぐのが目的。1977年から始まった。現在、1次検査の費用は原則無料で、ほとんどの新生児が受けている。
 当初は、フェニルケトン尿症などアミノ酸代謝異常症3疾患と、糖代謝異常症、先天性の内分泌疾患2疾患の計6疾患しか判定できなかった。その後、「タンデムマス法」という分析法が開発され、有機酸代謝異常症や脂肪酸代謝異常症など、新たに13種類の病気がわかるようになった=表。この分析法は2014年4月から全国で導入された。
 国立成育医療研究センター研究所の松原洋一所長(臨床遺伝学)は「障害を予防できることが、この検査の最大のメリット」と話す。島根大学の山口清次教授(小児科)によると、発症後に有機酸代謝異常症と診断された108人のうち52%に後遺症が残り、30%が亡くなった。新生児マススクリーニングで発症前にわかった39人では、90%が障害なく成長したという。

引用元:
新生児の発症前治療へ前進 血液検査でわかる病気、19疾患に拡大(朝日新聞アピタル)