乳がんなどの進行に関わる「エストロゲン受容体」が、がん細胞のDNAで、まさに増殖のスイッチを入れようとしている、その場の様子を「低温電子顕微鏡」で立体的にとらえることに成功した。
乳がんのがん細胞が増えるのを押しとどめる手段を考えるために意味のある発見となりそうだ。
低温電子顕微鏡でモデル化
米国ベイラー医科大学の研究グループが、分子細胞生物学分野の専門誌モレキュラー・セルのオンライン版で2015年2月25日に報告したもの。
「エストロゲン受容体α(ERα)」は、乳がんなど、女性特有のがんの進行に深く関わるタンパク質の1つだ。エストロゲン受容体は、女性ホルモン「エストロゲン」がくっつくと、がん細胞の「核」の中に入っていき、DNAに直接くっつく。するとそこに、さらに他のタンパク質(共役因子)がいくつかくっついて、がん細胞の増殖スイッチがオンとなる。
この一連の流れは既に解明されている。
さらにエストロゲン受容体αが実際にどんな形をしているかを調べ、共役因子とともにDNAにいかにくっついているのか、その複合体の構造まで調べ上げることを目指した。
今回研究グループは、「低温電子顕微鏡(cryo-EM)」とコンピューターを利用して、複合体の立体構造について解析を試みた。低温電子顕微鏡は、標本を急速凍結して立体構造を保持したまま観察できる装置で、人工的に色を付けなくても生体内の構造を生のまま観察できるのが特徴だ。
くっつく順番やくっつき方が分かった
でき上がった立体構造モデルを解析したところ、DNA上で複合体が形成される順番が予測できた。
まず、エストロゲンがついたエストロゲン受容体αは、DNAの同じ位置に2つ、DNAをはさむような形でくっつく。次いで、2つのエストロゲン受容体αはその場でそれぞれ別々に共役因子「SRC-3」を1つずつくっつける。すると2つのSRC-3で別の共役因子「p300」をはさむように捕らえてくっつける。こういう順番だった。
また、エストロゲン受容体αの「AF-1」と呼ばれる部分に「SRC-3」がくっつくのは前から分かっていたが、今回は立体的にどのような形でくっつくのかまで知ることができた。
タンパク質の立体構造は機能と密接に関係している。今回の立体構造の解明も、エストロゲン受容体αのさらなる作用機序の解明に役立つのは間違いない。診断や治療に役立ちそうだ。
文献情報
Yi P et al. Structure of a Biologically Active Estrogen Receptor-Coactivator Complex on DNA. Mol Cell. 2015 Feb 25. [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25728767
引用元:
乳がんに関わる「エストロゲン受容体」、がん増殖のスイッチを入れる現場をとらえた (Medエッジ)