このたびの調査により、米国では自然分娩でなく帝王切開での出産になるリスクは、病院の規模や地域にも、妊婦の妊娠合併症の具合などにも無関係であると分かった。

 帝王切開にするときの明確な基準はないという実態があるようだ。

産科ケアの質向上のために
 米国ミネソタ大学とハーバード大学の共同研究グループが、プロス(PLoS)メディシン誌で2014年10月21日に報告した。

 米国では年間に130万人が帝王切開による分娩を行っている。帝王切開は、分娩時のリスクを回避するために大事な手段の1つだ。とはいえ、自然分娩より感染、痛み、再入院などのリスクは高くなる。

 どういった場合に帝王切開を行うかは全国で統一されておらず、病院の方針に依存している。

 実際、帝王切開の割合は病院によって大きくばらついている。その原因を知るのは、産科ケアに一貫性を持たせ、質を上げるために重要となる。研究グループは今回、なぜ病院によって帝王切開数にばらつきがあるのか探るために、国の医療データを用いて解析を試みた。

さまざまな要因を考慮し解析
 今回、米国健康保険調査プログラム「HCUP」のデータベースから、2009年から2010年までの、米国の病院の約20%にあたる1373の病院での150万人弱の分娩データを用いて病院ごとの自然分娩と帝王切開の割合を調べた。また、分娩に関するさまざまな要因を考慮して、統計的に解析を行った。

 考慮した要因は、診断項目では、妊娠糖尿病、妊娠高血圧、妊娠中の出血、胎盤関連の合併症、胎児仮死、児頭骨盤不均衡(じとうこつばんふきんこう、赤ちゃんの頭と母親の骨盤の大きさに差があり難産となる状態)、分娩停止など。診断以外の要因は、母親の年齢、人種、保険加入状況、病院の規模(大、中、小)、場所(都会、田舎)、教育状況などだった。

リスクは妊娠関連疾患に大きく依存
 結果、全体での帝王切開の割合は平均33%、初めて帝王切開を行う人の割合は平均22%だった。

 帝王切開が行われる数は病院の規模により大きく差があった。診断の違いによっても帝王切開になるリスクに差が生じなかった。

 妊婦が帝王切開となる平均リスクは、病院の規模、場所、教育状況によらず同程度。年齢、人種、保険加入状況、妊娠出産に関連した疾患の状況で、帝王切開となるリスクは、妊婦ごとに大きくばらついていた。

 今回の解析では、1人当たりの出産数や妊娠期間を考慮に入れなかったが、これらも重要な要素となるので今後は検討する必要があると研究グループは述べている。また、帝王切開を決定する際の病院の方針、診療方法、文化といった他の因子についても検討が必要であると締めくくっている。



文献情報
Kozhimannil KB et al. Maternal clinical diagnoses and hospital variation in the risk of cesarean delivery: analyses of a National US Hospital Discharge Database. PLoS Med. 2014; 11: e1001745.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25333943



引用元:
帝王切開の明確な基準がない、3人に1人は帝王切開ながら (Medエッジ)