大町市立大町総合病院の分娩休止問題が慢性的に産科医が不足している県内各所に波紋を広げている中、分娩を取り扱えるはずの助産師が十分な能力を発揮できない状況にあることが、23日に県庁で行われた県助産師会(池上道子会長)と阿部守一知事との懇談会で浮き彫りになった。この中で、助産師会側は医療法で義務付けられている嘱託医との連携について、医師側の十分な協力を得られないため、分娩を扱える助産所を開設することが困難になっている状況などを指摘し、行政側のサポートを求めた。
◆要望に応えられず
懇談会は産科医不足などによって県内各地で生じている“お産の危機”を受けて初めて開催された。阿部知事が「今後30年間で50万人近い人口が減ると見込まれる中で、出産期前後の若い世代をどうサポートしていくかが、県の将来を左右する」と課題を投げかけたのに対し、池上会長は「助産所を開業するのにあたって一番の問題は医療機関との連携」と指摘した。
平成19年の医療法改正で、助産所を開設するには産科医か産婦人科医である嘱託医を定めることが義務付けられた。懇談会の席上、同会の保谷ハルエ顧問は「(分娩を扱える)助産所を開業するには嘱託医の協力が必要だが、医師に嘱託医をお願いしてもほとんど受けていただけない」と現状を訴えた。池上会長によると、県内で分娩を扱っている助産所は15カ所だが、助産所を新たに開業したくても産科医不足によってできない状況にあるという。
医療法の改正は、突然の大量出血などの緊急事態に備えて、安心なお産を確保する目的で行われた。ただ、「慢性的な産科医不足の中で、多くの医師が嘱託医を依頼されても手いっぱいだったり、緊急時に対応しきれない状況があったりする」(塚田昌大県保健・疾病対策課長)ことから、助産師側の要望に応えられていないのが実情だ。
◆正常分娩は助産師
助産師会は「医師からすれば助産師の能力に対する心配があると思う」(保谷顧問)として、助産師会などが臨床能力や技術を認定する制度の整備に向けて準備を進めている。「正常な分娩は助産師が行い、異常分娩は医師が行うという形にしないと、医師の負担が非常に大きくなってしまうし、医師不足の中で疲弊していくだけ。正常な分娩を助産師が担えるようにしていきたい」と強調する。
こうした助産師会側からの問題提起に、阿部知事は「地域で子供を産めない状況は何とかしなくてはならない。正常な分娩は助産所でできるような環境をつくることが大事。どうあるべきかを一緒に具体化できるようにしたい」と応じた。
◆産後ケアに空白も
一方、懇談会では出産後の退院時から新生児の1カ月健診までの間、産後ケアに空白が生じている点も指摘された。この点について、池上会長は「退院した直後から約1カ月が、母乳などで一番大変な時期。産科医院は出産から5日程度で退院させているが、母乳の指導などを十分に行う時間がない。そうした部分を助産師が指導できればいい」と提案した。
母子保健サービスは、県から市町村に移管されて19年ほどがたつが、市町村によって濃淡があるのが実情。県は4月から「信州母子保健推進センター」を設けて、市町村と協働した子育て支援のあり方を構築していく考えだ。これに関連し、阿部知事は「県と市町村が一緒に分娩や周産期の対応について計画し、助産師を上手に活用できるプランのようなものを作ることはできないか」と担当部署に指示した。
引用元:
産科医不足問題 医師と連携、助産所活用 長野知事に助産師会、行政サポート要請 (産経ニュース)