白血病患者の将来の妊娠・出産に備え、卵子を凍結保存する大規模な臨床研究に取り組む民間不妊治療施設の学術団体「日本A−PART」(理事長=神谷博文・神谷レディースクリニック理事長)が、過去八年間で百五十四人の卵子を凍結保存し、出産に至ったのは二人だったとの報告をまとめた。


 白血病患者の卵子凍結保存、治療後の出産に関する詳細なデータが示されるのは初めて。


 卵子の凍結技術は、抗がん剤や放射線治療によって卵巣が傷つき、子どもができなくなる可能性があるがん患者にとって、将来の出産につながる希望となっている。がんのうち、比較的若くして発症する白血病を対象とした今回の報告では、一部患者には保存が有効である一方、治療を乗り越えて出産にこぎ着けるには、長い期間を要することも明らかになった。


 臨床研究は二〇〇七年二月から一五年一月まで、十五歳以上で未婚の血液がんの患者を対象に行った。四百九十四人から問い合わせがあり、百五十四人がA−PARTに加盟する二十二施設で卵子を保存した。このうち、治療後に解凍し夫の精子と受精させたのは四人。受精卵を体内に戻し三人が妊娠し、二人が出産した。


 解凍後の使用に至らない患者の中には、がん治療が長引いた人や亡くなった人、結婚相手がいない人などがいるという。


 臨床研究の代表を務めるセント・ルカ産婦人科(大分市)の宇津宮隆史院長は「まだ百三十一人が卵子を保存しており、全体の結果が出るには時間がかかる。子どもの健康調査も含め、この研究は個人病院ではなく公的機関が引き継ぐべきだ」と述べた。


 採卵した患者の平均年齢は二十五歳で卵子は平均六・四個採れた。十個採卵できれば一回程度妊娠が期待できるという。採卵による多量の出血や感染症はなかった。結果は二十二日に東京都内で開くA−PART講演会で発表する。


引用元:
卵子凍結出産 8年間で2人 臨床研究初データ(東京新聞)