子供の風邪にも、大人同様に風邪薬や抗生物質が使われています。薬が使われ過ぎであることは、多くの人の意見が一致しています。しかし、「どういう時に使って、どういう時に使わないか」という使い方については、意見の一致を見ないのが現状です。

 まず風邪薬について。子供が風邪の時に何も薬を使わない人はまれでしょう。鼻水が出れば鼻水止め、せきが出ればせき止め、熱が出れば解熱剤が当たり前のように処方されます。鼻水やせきで苦しそうな子供を放っておけないというのはその通りで、なんら異論はありません。

 しかし、鼻水止めやせき止めの薬は、風邪を早く治さないばかりか、その場の症状に対してもあまり効果がなく、一方で副作用もあることが示されています。薬に効果があるから使うというよりは、医者や親が安心したいために使っている面があり、薬を投与された子供は副作用で苦しむだけかもしれません。

 アメリカ小児科学会は2歳未満の子供に「鼻水止め、せき止めを使ってはいけない」、4歳未満にも「使うべきではない」と言っています。日本でも日本外来小児科学会が同様の主張をしています。

 次に抗生物質について。乳幼児では風邪と思っていたら中耳炎や肺炎ということがよくあります。細菌性髄膜炎や化膿(かのう)性関節炎、敗血症など重症の感染症のこともあります。「抗生物質でこうした病気を予防する必要がある」というのはなかなか説得力のある説明です。しかし、やはりアメリカ小児科学会は、風邪に抗生物質を使ってはいけないと言います。
抗生物質を使っても合併症や重症感染症が減ることは示されていません。一方、発疹(ほっしん)や下痢など副作用の増加は明らかになっています。さらに大きな問題は、予防的に使われた抗生物質のために、重症感染症の原因となる菌が特定できなくなったり、抗生物質が効かない耐性菌を出現させたりすることです。

 細菌性髄膜炎は、風邪に抗生物質が山のように使われても減少しませんでしたが、乳幼児へのヒブ(インフルエンザ菌b型)や肺炎球菌のワクチンが普及したことによって激減しています。

 繰り返しますが、熱が出て、せき、鼻水はひどいけれどよくミルクを飲んでにこにこしている子供に、風邪薬や抗生物質を飲ませるのはやめた方がいいのです。子供を医者に連れて行き、「風邪です」と言われたら薬をもらわずに帰るのは、案外いい対応方法なのです。(武蔵国分寺公園クリニック院長・名郷直樹)


引用元:
風邪の子供に薬どう使う 副作用は、抗生物質は…(産経新聞)