赤ちゃんをあやすときのやわらかい声掛け「マザリーズ」をご存じだろうか。耳慣れない言葉だが、かわいい赤ちゃんを見ると思わず「まあかわいい!」と出る高めの声がマザリーズだ。意識して語りかけると、赤ちゃんの情緒安定につながるという。初めての子育てに戸惑う母親たちの心の安定にもなるようだ。 (福沢英里)
「おふねをこいで、おふねをこいで…」。母親があおむけの赤ちゃんに向かい合い、優しい声でゆっくり歌いかけていた。ピアノ伴奏が流れるゆったりした雰囲気の中、愛知県大口町で先月開かれたマザリーズ教室。股関節を開くように、赤ちゃんの両足首をおなかへ寄せる、簡単な体操も交えて母子が触れ合った。
マザリーズは声は高め、話す速度はゆっくり、音の高低や抑揚をたっぷりつけるのが特徴。赤ちゃんの出した声や音をそのまま、まねて返す、または高い音や低い音、うれしい声、悲しい声などさまざまな変化をつけて語り掛けてもいい。「三カ月ごろまでは歌と同じような感覚で言葉を聞いています。歌うように語り掛けて」。講師を務めた名古屋女子大短期大学部保育学科講師の児玉珠美(たまみ)さん(56)がアドバイスした。
教室では母親の姿勢もチェック。背筋を伸ばし、胸を張って骨盤を立てるように座る。あぐらや正座がちょうどいい。おでこや頬、口角を上げ下げして顔の筋肉もほぐした。「ママの生き生きした声や表情を見て、赤ちゃんがまねをするようになりますよ」
マザリーズで絵本の読み聞かせも。児玉さんが絵本「ぴょーん」(ポプラ社)を開き、「親子でぴょーん」のフレーズにさしかかると、「親子で」と低い声で読み始め、少しずつ高い音程に声のトーンを上げながら「親子で」と三回繰り返した。最後に「ぴょーん」で一斉にジャンプ。
最初は表情の硬かった母親たちも、次第に笑顔に。七カ月の長女と参加した大口町の主婦増田みゆきさん(42)は「初めての子育てで分からないことばかり。マザリーズの読み聞かせを試したい」とヒントを得た。
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同県北名古屋市の子育て支援センターでは昨年、マザリーズ講座を初めて開いた。「赤ちゃんにどう声を掛けたらいいのか分からない」などと戸惑う母親の声がきっかけ。参加した母親からは、マザリーズを意識した読み聞かせで「赤ちゃんの反応が良くなった」などの感想が寄せられた。
マザリーズは米国の文化人類学者が一九六六年に研究論文で初めて言及。その後の研究で脳の言語野の働きが活発になり、言葉の理解を促すことなどが分かった。同志社大心理学部教授の内山伊知郎さん(58)は、「マザリーズで乳幼児に話しかけると、母親の方へ注意が向き、存在を常に感じることが安心感にもつながる。安定した対人関係の基礎になる」と説明する。
乳幼児に接するきょうだいや父親の語り掛けでも、マザリーズの傾向はみられる。相手を受け入れ、寄り添う気持ちになれば誰でも使える。
今月末には内山さん監修、児玉さんら研究者が執筆した「マザリーズの理論と実践」(北大路書房)が出版される。他地域の子育て支援センターでも教室を開けるよう、保育者向けの研修会も検討中だ。今後のマザリーズ教室の開催予定などは、児玉さんが代表を務める「マザリーズの会」のHP(会の名前で検索)で。
引用元:
マザリーズであやす 赤ちゃんの安心感につながる(東京新聞)