医療や介護、健康にまつわるトピックスやテーマについて、ご意見や体験談を募集する「わたしも言いたい!」の第1回のテーマは、「受精卵を調べる」。朝日新聞のオピニオン面(2015年1月21日付)の記事(アピタルでは1月23日に掲載)で、2人の医師が、「受精卵検査」について意見を述べています。
この記事をもとに、皆さんから編集部に寄せていただいたご意見の一部を紹介します。
もとになった記事 《耕論》 受精卵を調べる 福田愛作さん、宇井千穂さん
■ 不妊治療中の患者、冷静に選択できるのか(小宮町子、主婦、46歳、埼玉県)
私は37歳から41歳までの間、、高度生殖補助医療(体外受精、顕微授精)を繰り返し受けましたが、妊娠出産には至りませんでした。また、受精卵を破棄した経験もあります。不妊体験者を支援する「NPO法人Fine」のスタッフをしています。
<着床前診断、受ける、受けない?>
数年前、まだ不妊治療まっただ中の頃、着床前診断という技術があり、取り入れているクリニックがあることを知りました。染色体異常の受精卵を排除して、流産のリスクを下げ、着床率、妊娠率を上げる目的だと聞きました。この「妊娠率」という数字に振り回されて、もう1回、あと1回と何度も体外受精に挑戦しました。
不妊治療を始めると、少しでも高い確率に希望を求めてしまうのが、患者なのだと思います。私も治療が失敗に終わるたびに、いろいろな原因を考え、様々な検査をしました。検査の結果、不育症の可能性もある(あくまでもグレーゾーン)ので、その治療も並行しての不妊治療でした。受精卵を調べる着床前診断が特別なものではなく一般的な検査であれば、何の疑問も持たずに私も受けたことでしょう。
着床前診断は障がいのない子どもを望む人が受ける特別のことではなく、妊娠の可能性が上がるからという理由で、医療者から勧められてあまり深く考えずに受けるのではないでしょうか。人工授精よりも体外受精や顕微授精が妊娠の確立が上がるからステップアップしましょうというのを受け入れるのと大差なく、ほとんどの患者が受け入れているのと同じようにです
もちろん、受ける受けないは、患者の選択になるかとは思うのですが、治療中の人が妊娠の可能性が高くなるのに断るのは難しいと思います。そして、夫婦で意見が違ったり、親や親族から、何で受けないのかと言われ悩むかもしれません。
また、検査費用も気になります。
<命のはじまり>
受精卵は、私にとって生まれてくるかもしれない命「わが子」と同じでした。治療の終結にあたり、凍結保存していた受精卵の破棄について、とても悩み結論を出すのに時間がかかりました。今でも、これで本当に良かったのか悩むこともあります。流産や中絶よりも肉体的、身体的負担が少ないとは思いますが、全くないということはありません。受精卵を得るまでにも、体には多くの負担がかかります。お金もかかります。そして、得られた受精卵は、私にはとっても愛おしい大切な命の始まりでした。
<この世に生まれ生きるということ>
障がいや疾患をもって生まれてくることは、その子に生命力があるからだと思います。生まれてこなければ良かったという言葉には、大きな違和感を感じます。また、出産時のトラブルなどで、障がい者になることもあります。そして子どもの成長の過程で、思いがけず、病気や事故で障がい者になることもあります。それらをふまえて、果たして着床前診断で、生まれてきてもよいかどうかを親が、医療者が命の選択をしてもいいのか疑問です。
<障がいは、不幸なのか?>
それぞれの人の人生が、それぞれ違うように、障がいがあっても無くても関係ないのではないでしょうか。どうしてそう考えるのかというと、数年前に、父が病気の後遺症で障がい者になり、私も障がい者の家族となりました。それは不幸かといえば、そんなこともなく、ただ大変だということです。そして、その大変さは、社会の無理解と無関心からです。ましてや本人は、不幸だなんて考えたことはないのではと思います。父との意思疎通が難しいので、これはあくまでも私の推測です。
<まとめ>
不妊治療から離れた今だからこそ、冷静な判断ができますが、着床前診断を受ける、受けない選択を不妊治療まっただ中の患者が本当に冷静にできるのかどうか疑問です。そして、どちらを選んだとしても、後悔のないようにしっかりと心のケアをしっかりしていただきたいです。着床前診断は、誰のため、何のための技術なのかをしっかりと、さまざまな立場の人で議論していただきたいです。もちろん、当事者である不妊治療を受けている患者、受けたことのある患者の声もしっかりと聴いていただきたいです。そして、人を幸せにするのが医療だと信じています。
引用元:
不妊治療中の患者、冷静に選択できるのか (46歳・主婦)(朝日新聞)