水道水に微量に含まれる有害物質「ヒ素」。赤ちゃんを母乳で育てるよりも粉ミルクで育てる方が、赤ちゃんの体内に取り込まれるヒ素の量が多いと分かった。ただし、水道水よりもむしろ粉ミルクそのもののヒ素が、体内への取り込みにより多く関与していた。

 米国ダートマス大学の研究グループが、環境衛生学の専門誌エンバイロンメンタル・ヘルス・パースペクティブ誌で2015年2月23日に報告した。

母乳 VS 粉ミルク

 ヒ素は、ごく微量であれば生存に必須な物質とも考えられている。人体にもごく微量存在する。しかし、少し量が増えると瞬く間に有害物質になる。猛毒で、発がん性もあるため、生まれたての赤ちゃんは、なるべくヒ素を体内に取り込まないに越したことはない。

 実は、天然水にも水道水にも、微量のヒ素が含まれている。日本の水道水の水質基準では、ヒ素は1L当たり10μg(マイクロは100万分の1)以下と定められている。

 水道水に含まれるヒ素には地域差がある。これまでの研究で、ヒ素が比較的多い地域でも、そこに住む母親の母乳に含まれるヒ素濃度は低いと分かっている。水道水に含まれるヒ素が少ない地域では、粉ミルクのヒ素も少ないと見られるが、赤ちゃんを母乳で育てる方がヒ素を減らせるのかは分かっていなかった。

 米国の多くの地域では、水道水に含まれるヒ素の量が比較的少ない。研究グループは今回、米国の乳児期初期の赤ちゃんを対象に、母乳で育てたか粉ミルクで育てたかの差と、乳児の体内に取り込まれたヒ素の量との間に関連性があるかどうかを調べた。

 調査はニューハンプシャー州で3日間行われた。864世帯の家の水道水、生後6週間の乳児72人の尿、母親9人の母乳に含まれるヒ素の量を「ICP-MS」という技術を使ってそれぞれ測定し、比較した。

水道水より粉ミルクそのものに

 その結果、乳児の尿のヒ素濃度はいずれも低く、1L当たり平均0.17μg、最大3.0μgだった。ところが、低い中でも、母乳だけを飲んでいる乳児より、粉ミルクだけを飲んでいる乳児の方が7.5倍多くのヒ素が検出された。

 また、乳児が1日に取ったヒ素の平均量は、体重1kg当たりに換算すると、母乳だけを飲んでいる乳児では0.04μgであるのに対し、粉ミルクだけを飲んでいる乳児では0.22μg と、5.5倍多かった。

 粉ミルクの粉にも水道水にもヒ素が含まれている。どちらの方がより乳児の体に取り込まれたヒ素に関係しているのだろうか。

 研究グループは、各家庭の水道水に含まれるヒ素の量と、これまでに報告された粉ミルクに含まれるヒ素の量から計算してみた。するとヒ素の70%までは、水道水よりもむしろ粉ミルクからのものだろうと推測された。

 可能であればできるだけ母乳で育てるのが良いかもしれない。

文献情報

Carignan CC et al. Estimated Exposure to Arsenic in Breastfed and Formula-Fed Infants in a United States Cohort. Environ Health Perspect. 2015 Feb 23. [Epub ahead of print]


引用元:
粉ミルクを飲んだ赤ちゃん、母乳に比べ多くのヒ素を体に取り込んでいた(Medエッジ)