これ、私のことだ――。母親の悩みやモヤモヤした気持ちをリアルに表現した作品が発表され、共感を呼んでいる。描かれているのは、理想の母親像や、子どもと2人きりの疎外感、夫婦の役割の固定化などへの本音と疑問だ。

母親の本音を漫画にした田房永子さん=東京都

 「ママだって、人間」は漫画家の田房(たぶさ)永子さん(36)が、妊娠から乳児期の子育てまでの体験を描いたものだ。1年前に出版され、インターネット上のブログなどで話題になっている。
 漫画はつわりのエピソードから始まる。田房さんが高校生のとき、妊娠中の先生が「つわりは母性で乗り越えられるのよ」と言った。しかし、妊娠中の田房さんは「母性」がわからず、モヤモヤする。妊婦の性欲や性生活についても、不思議に思ったり気づくことがあったり。それを正面から取り上げた。
 出産後は1人で「おむつにおっぱい」の繰り返し。夫の協力はあったが、気持ちが通じないと感じ、会話は減ってしまう。
 最終話は、以前の同僚たちとの飲み会での出来事だ。育児を語る男性たちが「男には全然なつかないよな」「母乳が出ないってのはつらいよな」などと言う。「子どもが起きちゃうから、会いたいのに帰れないんだよ」という発言もあり、田房さんは「さっさと帰って奥さんと交代してあげてよ」と思う。
 彼らの話す妻は、子育てが大好きで、「母性」が絶えず湧き出しているような女。母親も個性や人格があるのにそう思われていない。本音を赤裸々に描いたのは「母親は人間として尊重されていない。社会の階層の下にいるんだな」と感じたからだ。


引用元:
共感呼ぶ、母親のホンネ 「ママだって人間」育児を漫画に(朝日新聞)