内閣府の「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」が出した「少子化社会対策大綱の策定に向けた提言」では、妊娠・出産・子育てに関わる教育に関しても提言した。
このことすなわち「妊娠・出産・子育てに関わる知識を教育課程のなかで習得する必要がある」こと、に言及した理由は、現在、晩婚・晩産化が進み、妊娠・出産適齢期に出産する人が少なくなってきているためである。
以前は、このような知識を教育課程で教えなくても、医学的に一番安全な時期に出産していた。1970年代までは出産のピークは24〜25歳にあった。しかし、2013年の出産ピークは30歳となった。また、女性の第一子出産平均年齢も30.4歳である。
このコラムでもいろいろなデータを基に、男女とも妊娠・出産適齢期は20代であると話してきた。すなわち、出産した人の半分が妊娠適齢期を超えて出産していることになる。また、30歳を超えて出産しても、周囲の人がそのような時期に出産しているので、この年齢で出産しても特に違和感として感じないのである。
妊娠・出産に適齢期が存在することをしっかり理解し、自ら自分のライフプランを設計しないと、社会の流れに流されてしまう可能性が高いのである。特に、20代は、就職し仕事を覚えるのに必死であり、仕事の面白さにのめり込むことも多い。それも、人生のうちで大切なことでもある。
しかし、人の体は、待ったは聞かないのである。一番良い時期を逃すとあとは、下がる一方である。最近はやりのアンチエージング、いかにもどんなことにでも、加齢の影響を抑制することができる方法があるかのように、錯覚されているところがある。しかし、妊孕性(妊娠する能力)は、年齢に伴う自然の減衰は抑制できないのである。
3月2日に日本産科婦人科学会など関連9団体が有村治子・少子化担当相と面会し、妊娠・出産の適齢期に関する知識について、中学と高校の教科書に盛り込むことを要望した。これは今、新しく策定を進めている「少子化社会対策大綱」における有識者会議の提言案に呼応する。
しかし、有識者会議の提言案に示すように、もう一つ重要な点がある。それは、必要に応じ、妊娠・出産・子育てに関わる専門家の意見を取り入れることを提言していることである。すなわち、産婦人科医や小児科医、その他この分野に関わる専門家の意見を教材に盛り込み、正しく、しかも最新の知識が教育されることを提言したのである。
医学の進歩は速い。恥ずかしながら、私も、10年前は妊娠・出産の適齢期に関し、これほど重要であるとの認識を持っていなかった。専門家でさえこうなのである。小中学校や高校の教育内容を定めた学習指導要領の全面改訂に向けた議論などを行う中央教育審議会においては、教育学の専門家だけでなく、是非、教育内容に沿った医学等の専門家の意見が反映するような学習指導要領を策定していただきたいと考えている。


引用元:
《35》 妊娠・出産・子育ての適齢期に関する教育(朝日新聞‎)