女性の体調不良の原因になることも多い月経。経血の量が極端に多かったり、期間が長引いたりする過多月経という症状はあまり知られていない。正常かどうかの境が分かりにくいが、貧血の原因になったり、思わぬ病気が潜んでいたりすることもある。経血の量が多いと感じたら早めの受診が必要だ。(日野稚子)

 ◆いつものこと…

 「問診すると『慣れている』『体質なので大丈夫』と話す女性がほとんど。過多月経と診断されても、症状の重さに自覚がない人が多い」と話すのは、倉敷平成病院(岡山県倉敷市)婦人科の太田郁子医師だ。

 生理期間中の経血の量は、平均50〜100ミリリットルとされるが、140ミリリットルを超えると過多月経とされる。

 月経期間中の総量を把握することは難しいが、昼でも夜用ナプキンを使う日が3日以上あったり、普通のナプキン1枚では1時間もたなかったりすることが判断基準となる。

 太田医師によると、過多月経は(1)子宮内膜が厚い(2)子宮の止血力が弱い−が主な原因だ。

 子宮内膜が厚い場合は、子宮体がんや子宮内膜増殖症が疑われる。止血力が弱い場合は、子宮内膜の腫瘍や子宮内の手術の痕が原因となっていたり、子宮に異常がなくても経血の量が多い特発性過多月経だったりすることが考えられる。血液の病気が原因となっていることもある。
 過多月経の原因となっている重大な病気を早期に発見するためにも、症状を自覚することが大切だ。

 ◆貧血の6割原因

 「鉄分不足による女性の貧血の6割は過多月経が原因といわれる」と太田医師。出血により血中の鉄分が不足し、酸素を運ぶヘモグロビンが足りなくなって起きる貧血で、立ちくらみや動悸(どうき)・息切れ、倦怠(けんたい)感、味の感じにくさなどの症状が表れる。放置すると心臓に負担がかかり、心不全に至ることもある。

 昨年9月、過多月経の症状を抑える治療薬が承認された。子宮内装着型のホルモン剤「ミレーナ」(一般名・レボノルゲストレル)で、子宮内に入れると女性ホルモンの一種である黄体ホルモンを少しずつ放出する。平成19年に避妊用として発売されたが、海外では過多月経でも治療実績があり、医療上の必要性が大きいと判断された。

 黄体ホルモンが子宮内膜の増殖を抑え、経血量を減らす。一度、装着すると効果は最長5年という。妊娠を希望する場合には医療機関で取り外すことができる。

 「過多月経は健康診断で貧血を指摘され、初めて婦人科を受診する人がほとんど。見落とされがちだが重大な病気が潜んでいることがある。しっかり治療を受ければ貧血などの症状も抑えられる」と太田医師。「貧血と診断され、鉄分を補充しても改善されなかったり、経血の量が多いと感じたりしたらすぐに婦人科を受診してほしい」と話している。
■症状のある7割 「正常の範囲内」

 過多月経の症状がある女性の約7割が「正常の範囲内」と考えていたことがバイエル薬品(大阪市北区)が昨年11月、月経のある女性4413人(18〜45歳)を対象に実施した調査で分かった。

 調査結果によると、41.7%が「経血に大きな塊が混じることがある」など過多月経の症状があると回答したが、このうち、72.5%が「自分の経血量は正常範囲」と捉えており、婦人科を受診した人は15.5%にとどまった。受診しない理由は「病院に行くほどひどくないと思う」が62.5%だった。


引用元:
自覚しにくい「過多月経」…重大な病気が潜む可能性 貧血の原因にも(産経ニュース)