埼玉県内の女性看護師(49)は四年前、夜中に大量の汗をかくようになった。イライラして太りやすく、夜勤明けでも眠れない。更年期専門の病院で更年期障害と診断され、女性ホルモンのエストロゲンを補う「ホルモン補充療法」を始めた。約一カ月で眠れるようになり、症状は消えた。「骨密度も良くなり、元気になった。周りからも『若い』と言われてうれしい」

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 ホルモン補充療法は更年期障害の代表的な治療法。進み始めた老化を緩やかにし、のぼせやほてりなどの症状は、早ければ一週間程度で改善するという。治療の開始は五十代前後が最適とされ、飲み薬、貼り薬、塗り薬を好みで選べる。

 エストロゲンには、乳房や子宮など生殖に関わる機能維持のほか、骨を丈夫にする、血管をしなやかにする、おなかに内臓脂肪がたまるのを防ぐ、脳を活性化する、感情や精神を安定させるなどの役割がある。更年期以降は、骨密度の低下や生活習慣病のリスクが上昇するため、補充療法で骨粗しょう症やアルツハイマー病などの発生リスクも下げるとされる。

 欧米では補充療法の普及率が50%前後の国が少なくないが、日本は数%。長年、更年期治療に取り組んできた小山嵩夫(たかお)クリニック(東京)の小山嵩夫院長は、その理由を「医療経営的な問題が大きい」と指摘する。患者から話を聞くのに時間がかかる割に、検査は少なく薬も安い。利益につながらないと、敬遠されがちになるという。

 ほかの病気の予防など、更年期障害の治療以外では、保険が適用されないこともネックだ。

 副作用などの正確な知識が普及していないことも一因とされる。二〇〇二年の米国の調査で、五年以上ホルモン補充療法を続けると、乳がんのリスクが26%高まるとの発表があった。しかし、調査対象者は肥満や高齢など元来リスクの高い人が多かった。今では調査結果を安易に日本に当てはめるべきではないとの見解が主流で、「神経質になる必要はない。定期的な検診で対応可能」という。

 〇九年、日本産科婦人科学会などが補充療法の指針を作成し、利点や欠点が明確化された。小山さんは「更年期の暗いトンネルを我慢している人は多いが、抜けるまで五年、十年とかかる人も。誤解で普及が進まないのは残念」と話す。

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 更年期症状に悩んでいても、受診せず我慢する女性は多い。女性の健康週間(一〜八日)にあたり、更年期について二回に分けて紹介する。

 (砂本紅年)

 <更年期> 女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンがある。女性の約9割が閉経を迎える45〜55歳は、エストロゲンの分泌が急激に減少する。一般にこの10年を「更年期」と呼ぶ。ホルモンバランスが崩れ、イライラ、めまいなどさまざまな不調が表れる。これらを更年期症状といい、個人差はあるが、ほとんどの人が感じる。生活に支障をきたす症状は「更年期障害」と呼び、全体の20〜30%を占める。治療法はホルモン補充療法のほか、漢方療法、精神安定剤、カウンセリングなどがある。



引用元:
<もしかして更年期!?>(上) ホルモン補充療法(中日新聞‎)