不妊症の早期診断や早期治療の可能性を示す
日本国内のみならず、世界的に見ても妊娠を望むカップルの1割が不妊に悩んでいるとされる中、理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)のチームは、マウスを使った実験により、体の形成や発がんに重要な役割を果たすとされる「β-カテニン遺伝子」が1文字(1塩基)違うだけで、精子と卵子が正常でも不妊となることを突き止めた。不妊の早期診断や早期治療も期待できることから、今後、さらなる研究が望まれる。
生物の遺伝情報は、細胞内のDNAに塩基と呼ばれる4つの文字、A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)を組み合わせた暗号文字で構成されている。
β-カテニン遺伝子は、生物の組織の形成に深くかかわる「β-カテニンタンパク質」を作る必須遺伝子であり、β-カテニン遺伝子全体が欠損すると、成長が止まって胎生死することが知られている。
このため、β-カテニン遺伝子を1文字(1塩基)だけ変化させたとしても、身体全体に影響せずに局所的な症状につながるとは考えられていなかったのだ。
429番目のアミノ酸の塩基配列変化で精嚢や膣形成に影響
研究グループは、β-カテニン遺伝子の詳細を理解するため、マウスのゲノム情報を1文字(1塩基)レベルで機能解析するシステムを使い、ゲノム情報を通常のTではなくAに変わったマウスを作製。
その際にβ-カテニンタンパク質を構成する781個並んだアミノ酸のうち、429番目のアミノ酸で塩基配列に1カ所変化があると、精子と卵子は正常に作られるが、精嚢(せいのう)や膣(ちつ)形成には局所的な影響が現れ、不妊になるという結果を導き出した。
マウスの具体的な症状を挙げると、メスのマウスは膣の形成不全を引き起こし、膣が閉じて交尾ができなくなったほか、オスのマウスは精嚢の形成過剰により、精液を作る精のうに異常が発生し、精子が卵子にうまくたどりつけなくなっていた。
同チームの村田卓也開発研究員は「β-カテニンタンパク質のアミノ酸配列は、人間とマウスと全く同じで、マウスの解析結果が人間にも当てはまる可能性は高い」と話しており、不妊の早期診断、早期治療につながることが期待される。
同内容は英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版にも掲載された。
引用元:
遺伝子情報、わずか1文字違いで不妊に 理研発表(妊活・卵活ニュース)