国内の受精卵の検査は現在、重い遺伝病などを対象に限定的にしか行われていないが、一般の不妊患者に対象を拡大した「着床前スクリーニング」が検討されている。年内にも国内で臨床研究が始まる見通しだ。
受精卵の検査は、細胞分裂がある程度進んだ段階で一部の細胞を採取して、染色体の異常を調べる。子宮には異常がない受精卵だけを戻す。胎児の検査は、結果によっては人工妊娠中絶を選ぶ人もいるが、受精卵を検査して選べば、通常は中絶せずに済む。
2004年に臨床研究として始まった受精卵の検査は「着床前診断」と呼ばれ、日本産科婦人科学会は当初、重い遺伝病がある夫婦に限って実施を認めた。06年には特定の染色体異常が原因で流産を繰り返す夫婦にも対象が拡大され、学会はこの10年間で361例の実施を認めてきた。
しかし、学会は不妊や流産に悩む一般の患者に行うことは禁じてきた。染色体異常がある受精卵を排除するため、「命の選別につながる」との批判があったからだ。
それが今、一般の不妊患者に広げることが改めて議論される背景には、近年、妊娠年齢の高齢化で、染色体異常による不妊や流産に悩む女性が増えている事情がある。
従来の検査方法では一部の染色体しか調べられず、正常とみなされた受精卵を子宮に戻しても妊娠や出産に至らないケースが少なくなかった。だが、「アレイCGH法」という新しい検査技術が登場し、より多くの染色体を調べられるようになった。
一般の不妊治療にこの技術を導入すれば、流産を減らしたり、妊娠率を高めたりできるのではないかという期待が高まり、各国で効果を確認する研究が行われている。国内でも一部の不妊治療クリニックが、すでにこの技術を導入している。
そこで学会としても医学的な有効性を検証するため、昨年12月、「着床前スクリーニング」を臨床研究として行うことを決めた。計画案によると期間は3年間。対象は、体外受精を3回以上失敗したり、流産を2回以上経験したりした患者とする。
学会は、臨床研究で着床前スクリーニングが医学的に有効との結論が出れば、それをふまえて倫理的な議論も行い、本格導入するかどうかを決める方針だ。
引用元:
重い遺伝病や流産防ぐ…「命の選別につながる」慎重論 (読売新聞)