小さな物質「SR1848」、新しい分子標的薬の候補となるか
乳がんや膵臓がんのうち、「LRH-1」というタンパク質が出ているものをターゲットにして、小さな人工合成物質「SR1848」が効果を示すと判明。新しい抗がん剤として有望である可能性が浮上している。
もろ刃の剣「LRH-1」
米国フロリダのスクリプス研究所の研究グループが、薬学分野の国際誌モレキュラーファーマコロジー誌2015年2月号で報告したものだ。
「LRH-1」は、細胞の核の中に存在するタンパク質で、もともとは肝臓でコレステロールを処理するときに働く「良い物質」として見つかった。
しかしその一方でLRH-1は、腸炎のほか、乳がんや膵臓がんの進行において「悪い物質」としても働くと、最近の研究により分かってきた。
みなしごタンパク質の「オーファン受容体」
LRH-1は「オーファン受容体」の1種だ。「オーファン」は「みなしご」という意味で、その名の通り、「受容体」という受け皿でありながら、そこに入ってくる(くっついてくる)相方はまだ分かっていない。
ただ、LRH-1の立体構造は調べられており、その形から、LRH-1には「リン脂質」がくっつくようだと予測されている。また、実際にネズミにリン脂質を食べさせると、LRH-1にスイッチが入り、働ける状態になると分かっている。
小さな「SR1848」がLRH-1の働きをブロック
今回、研究グループは、リン脂質ではないが、LRH-1にくっつく「SR1848」という名の小さな人工合成物質に着目し、このSR1848がLRH-1の働きに与える影響を、シャーレの中の培養細胞で実験して解析した。
結果、SR1848はLRH-1にくっついて、その働きを抑えていた。また、抑える程度は、加えたSR1848の量に比例していた。
細胞分裂もストップ
さらに、加えたSR1848の量に従って、LRH-1が働きかける、細胞分裂に関係のある2つの遺伝子「サイクリンD1」「サイクリンE1」も少なくなった。結果として細胞分裂も抑えられた。
これらの作用は、「siRNA」という別の方法でLRH-1を作れなくしても再現できたので、SR1848はLRH-1を確かに邪魔する物質だと確認できた。
分子標的薬として期待
また、これらの作用メカニズムの解析により、SR1848は、細胞の核にいるLRH-1を外の「細胞質」という部分へ連れ出して、働けなくしていると分かった。
以上より、SR1848は、遺伝子診断でLRH-1が出ていると判定されたがんに効く、新しい抗がん剤(分子標的薬)になり得ると研究グループは見ている。
今後の研究の進展に期待したい。
引用元:
乳がんや膵臓がんの「みなしごタンパク質」、ブロックしたらがん細胞の分裂がストップ(Medエッジ)