がんの既往歴がある人は、治療が終わってからも、再発や転移の不安を常に抱えていることでしょう。
漠然とした不安を抱きながら日々を過ごすのは、つらいものです。
小児がん(ユーイング肉腫)を発症してから11年。
私は、それらの不安を持ったことはありませんでした。
もちろん、ユーイング肉腫が悪性度の高い病気で、再発・転移も十分に考えられるということは、理解した上でのことです。
根拠はないけれど、「私は大丈夫!」という、妙な自信が支えていました。
現に、再発・転移もなく、今日まで生かされています。
しかし、人並みにがんへの不安を抱く出来事がありました。
婦人科系の話です。
抗がん剤は細胞分裂が活発な組織に効果を発揮しますが、正常組織に対しても同じことが言えます。
卵巣や精巣などの生殖器官は、抗がん剤の影響を受けやすい部分でもあります。
女性の場合、卵巣が傷害を受けることで、卵子が作られず月経が止まり、不妊へ至ります。
また、女性ホルモンの生成にも支障をきたすことから、更年期障害に似た症状が出たり、膣の萎縮や性交痛なども引き起こされたりします。
治療後に回復することもあれば、永続的な障害として残ってしまう場合もあり、治療内容や個人差が関係するところでしょう。
私のように造血幹細胞移植まで行なった場合には、かなりの確率で性機能を失うことになります。
それにも関わらず、私は性機能が正常に残っていました。
ホルモンの値も普通にあって、毎月、周期通りに生理は来るし、生理痛もありません。
治療による副作用の陰すらなく、生理不順なんて言葉とは無縁の生活でした。
昨秋、異変が起こります。
まず、経血の量が今までの2.5倍くらいに増えました。
そして、生理痛と思われる腰痛は、眠れないくらいひどいものでした。
幾月か続いたので、念のためと、婦人科を受診したのが昨冬のことです。
そこで告げられたのは、“子宮頸がん”の疑い――。
異常値を示す検査結果に、困惑を隠せません。
もし陽性だったら、どうしよう……。
仕事は? アピタルは? と、一気に不安が押し寄せます。
それよりも、「再発したら、治療はしない!」と、ずいぶん前から決めていました。
ということは、死ぬまでの時間をどう使うのかを考えることになるのでしょうか。
それとも、考えが変わって、治療を受けるのかもしれません。
どういう選択をするかは、そのときの私でないと分からないのでしょう。
先週、再検査の結果が出ました――「疑い」は消え、異常なしとのこと。
生理の異常は、昨夏の骨折による一時的なものだったようです。
がんを治すための厳しい治療は、完治と引き換えに、さまざまな後遺症や合併症を引き起こします。
性機能障害や二次がんも、そのひとつと言えるでしょう。
小児がんの場合は“治ってからの人生”が大人よりも長いことから、二次がんをはじめとしたリスクに晒される確率が高くなる側面があります。
それらのリスクを知識として認識しているのと、“◯◯がんの疑い”として実感するのとでは、天と地ほどに違いました。
今回の不安が杞憂に終わり、胸をなでおろしたところです。
小児がん患者にとって長期フォローアップが重要であると、あらためて思いました。


引用元:
《87》 「子宮頸がん」の疑い(apital)