三重県が二〇一四年度に全国の自治体で初めて取り入れた男性向け不妊治療の助成事業の利用者が、いまだに一人もいないことが分かった。男性の不妊治療の認知度が低い上、助成を受けても全体の治療費用が高額なため、希望者が二の足を踏んでいるとみられる。
男性の不妊症は、精液の中に精子が少ないなど造精機能の障害で生じることがある。妊娠を希望する場合、体外受精や顕微授精の前段階として、精巣内から精子を採取する手術が必要になるが、保険が利かず、費用は平均三十万円と高額。このため県は年収が計四百万円未満の夫婦を対象に、最大五万円を市町と折半して負担することにした。
県内では過去三年間で平均二十人が手術を受けており、県は一四年度、最大二十六人への支援を見込んで六十五万円を予算に計上。しかし、二月二日までに申し込みはゼロ。県子育て支援課の担当者は「所得要件に当てはまる人が限られるのかもしれない」と話す。
体外受精や顕微授精も保険の適用外で、それぞれ一回三十万円ほどかかる。国や県から最大二十五万円の助成が受けられるとはいえ、手術費用と合わせた負担額は少なくない。
三重県四日市市で産婦人科を経営する沢村茂樹院長は「不妊治療を受けるのは、所得が安定した共働きの夫婦が多い」と指摘。その上で、所得要件を満たし、手術を希望する夫婦が限られることは当初から予想されたとして「予算を抑えながら、少子化対策をやっているという県のポーズにも受け取れる」とする。
世界保健機関(WHO)の統計によると、不妊の原因の半数は男性にもあるとされるが、「不妊は女性の問題」との認識は根強い。三重県の事業には「男性の意識を変えたい」との狙いがあり、少子化対策の講演会などで説明を重ねる。一五年度も一四年度と同額の予算を盛り込む方針だが、担当者は「状況によっては、所得要件などの見直しが必要かもしれない」と話す。
◆所得要件、緩い府県も
男性向けの不妊治療の支援は新たな試みとして全国でも広がっている。
福井県は三重県の動きを参考に、同じく二〇一四年度から助成を始めた。「所得七百三十万円未満の夫婦」と三重県より条件を緩やかにし、手術費用を最大五万円支援する。これまでに一件の申し込みがあった。
合計特殊出生率が東京都に次いで二年連続で全国ワースト二位の京都府は、昨年十月に制度を導入。所得要件はなく、年間二十万円を上限に市町村と折半で助成する。すでに数件の申し込みがあるという。担当者は「子どもが産みやすい自治体だと認知してもらうため、幅広く支援を受けられるようにした」と話す。
他に大分県と山形県でも実施しており、東京都も一五年度から助成を予定している。
引用元:
初年度、利用いまだゼロ 三重県の男性不妊治療助成(中日新聞)