乳がんでは、女性ホルモンの「エストロゲン」が、がんの増殖を促すと分かっている。

 今回、エストロゲンが、エストロゲン受容体αにくっついて、「小胞体ストレス応答」のスイッチをオンにし、がん細胞が死にづらくなる仕組みに関与していると分かった。

「小胞体ストレス応答」でがん細胞は死ぬのを逃れる
 米国イリノイ大学の研究グループが、がん研究の専門誌オンコジーン誌2014年9月29日号で報告したものだ。

 細胞の中でタンパク質は、核にあるDNAから作られ始め、小胞体という部分で折りたたまれて、完成品となって細胞の外へ出る。ところが細胞が低酸素状態などのストレスを受けると、正しく折りたためなかった異常なタンパク質がたまり、細胞は死んでしまう。これが「小胞体ストレス」だ。

 がん細胞は、小胞体ストレスを回避して、増殖を続けられる。この仕組みは「小胞体ストレス応答」(UPR)と呼ばれている。

エストロゲンが小胞体ストレス応答のスイッチを入れる
 がん細胞が小胞体ストレス応答を起こす細かい仕組みは、まだほとんど解明されていなかったが、今回研究グループは、エストロゲンが関わっていると発見した。

 乳がんと卵巣がんについて、シャーレの中での培養細胞の実験と、生きたマウスによる実験の両方で、エストロゲンにより小胞体ストレス応答のスイッチが入ると証明したのだ。

 まず、エストロゲンがエストロゲン受容体α(ERα)にくっつくことにより、がん細胞の中にたまるはずの、正しく折りたたまれていないタンパク質を、速やかに壊してしまうのを手伝う物質(BiP, GRP78)が増えると突き止めた。これにより、異常なタンパク質が蓄積しなくなり、がん細胞は死ななくなっていた。

エストロゲンを邪魔すると小胞体ストレス応答は起きない
 また、がん細胞のエストロゲン受容体αを邪魔してエストロゲンがくっつけないようにしたり、エストロゲンの作用に関連するタンパク質を邪魔したりすると、小胞体ストレス応答が起こせなくなると証明した。これで、確かにエストロゲンが小胞体ストレス応答を起こしていたと言えるわけだ。

タモキシフェン治療の予後予測へ
 乳がんの治療には、エストロゲンの作用を妨げる「タモキシフェン」という薬が使われているのだが、小胞体ストレス応答に関係する遺伝子は、タモキシフェン治療が有効かどうかをあらかじめ知る手がかりとなる。がんの再発防止や生存率の上昇につながるだろうと研究グループは見ている。



引用元:
乳がんを進行させる女性ホルモン「エストロゲン」、がん細胞が死ななくなる仕組みに関与(Medエッジ)