シリーズ「いのちの“選択”」。5回目は、「AID」についてです。
「AID」とは、第3者から精子の提供を受けて行う不妊治療です。
このAIDで生まれた子どもたちが「親の素性を知る権利」が課題となっています。

東京・渋谷区にある産婦人科「はらメディカルクリニック」で、ドナーから提供された精子を使った人工授精「AID」が行われていた。
佐藤彩子さん(仮名・33)は「(治療を終えて)ちょっとワクワクする感じですね」と語った。
千葉県内に住む佐藤さん夫婦は、AIDに踏み切るまでに、大きな葛藤があったという。
夫の佐藤隆司さん(仮名・29)は「無精子症というので。このまま別れないといけないのかなというのがあって、悲しかったですね、結構」と語った。
妻・彩子さんは「子どもを産まないという選択肢は、ちょっと自分には難しかったので。AIDしかないということになりました」と語った。
AIDで生まれた子どもが決して珍しくなくなり、子どもの父親、つまり精子ドナーの素性を知る権利が大きな問題になっている。
現在、国内の精子ドナーは、医療機関が、医学生などを独自に集める手法が大半を占めている。
医学生の精子ドナー(20)は「ほかの人に、こういうバイトをしているとかは言ったりしていないので。自分が辞めるまでは何回でもできます、学生の間だったら。(子どもが父親を)知る権利は、あって当然だとは思っています」と語った。
こう話す一方で、生まれてくる子どもが実際に会いに来たら、どうするのかを聞いてみると、「あまり考えたことはなかったですけど。そのときに、自分に子どもがいるのかいないのかでも、結構変わってくるのかなと思いますけど。ちょっと難しいですね」と語った。
生殖補助医療ビジネスが盛んなアメリカの精子バンク。
フェアファックスクライオバンク社のミシェル・オッティ医師は「子どもが18歳になった時、希望すれば、ドナーの連絡先を教えます。ドナーのうち3割程度が、自分の素性を開示することに同意しています」と話した。
追加料金を払うと、精子ドナーの素性や連絡先を教えるシステムもあるという。
一方、スウェーデンでは、子どもが18歳になると、精子の提供者の名前と住所を知ることができる権利が保障されている。
スウェーデンでは、30年以上前から「出自を知る権利」が認められているが、子どもに精子提供で生まれたことを伝えない親が多いという。
佐藤さん夫婦は悩んだ末、生まれてくる子どもに、AIDで生まれたことを告知すると決めた。
彩子さんは「例えば、義理の両親とか。同じようにかわいがってくれるのかなとか。そういうことは、さんざん悩みましたけど。子どもが、(父親を)知りたいと思った時に、知れるような環境は、あった方がいいなと、今思っています」と語った。
「出自を知る権利」がなぜ必要か。
慶応義塾大学(産婦人科学)の吉村泰典名誉教授は「父親が誰であるのかということは、自我の確立、アイデンティティーの確立にとって、ものすごく大切なこと」と語った。

一方、「出自を知る権利」を認めることで、精子ドナーが減るのではないかと懸念する声もある。
今国会での提出を目指している生殖補助医療法案でも、この問題について議論がまとまっていない。

引用元:
いのちの“選択”「親の素性を知る権利」が課題となっています。(fnn-news.com‎)