最近、あるパパからこんなことを言われました。「政府が父親も育休をとらないといけないなどの規則を設けてほしい。そうするとお客さんに言い訳できるんです」
スーパーウーマンは現れる
 例えば、パパが保育園の送りを担当しているAさんの場合。その時間、お客さんから会社に電話があったとしましょう。子どもがいないときは、朝早く出社して電話に対応していたAさんですが、今はすぐに対応できない時間帯があります。そこでお客さんに文句を言われてしまう。
 「もし何かの規則で、父親も育児参加をしないといけないと決められていたら、『すみませーん。うち、コンプライアンス厳しくて』と言えるんです」
この話を聞いた時に思いました。男性は1人では変われないんだなと。一方、女性は自分の子どものこととなると、1人でも社内を改革しようとするスーパーウーマンが現れる。でも男性にスーパーマンは出ない。
 発言小町にも、こんなトピがありました。「夫に育休をお願いしたい…(駄)」と投稿したのは、第2子を妊娠中の女性。夫に「2か月間、育児休暇を取れない?」と聞いたところ、夫が怒ってしまい、夫婦関係がギスギスしてしまったそうです。
 夫の言い分はこうです。
・前例がない
・そんなこと、この会社でできるわけがない
・育児休暇の規定? そんなものあるわけない!
・やめされられてもいいのか!
 しかしトピ主様は「できないわけはない」と思っています。なぜなら自分の経験があるから。「(トピ主様の会社では)私が産休育休取得第一号。自分で法律や制度を調べ、周囲と相談・交渉をしながらお休みを頂き復帰しました。肩身が狭いと感じることもありますが、幸い味方をしてくださる方もいて復帰、評価も頂いています」とのことです。
 トピ主様はパイオニアとして道を切り開いたスーパーウーマンだったんですね。「私も前例がないところで努力したのだから、制度を調べて上司にかけあってほしい。その上で無理なら仕方がない」。トピ主様は自分の経験があるので、夫にもそう望みました。でも夫は“逆切れ”。「言えばいいんだろ! クビになっても知らないぞ!」
 そうなんです。パイオニアとして、孤立無援ながらも横並びである必要がない女性と比べると、残念ながら、会社という「組織」で生きる男性にとって、1人だけで交渉したり、道を切り開いたりするのはハードルが高いことなのです。
この投稿に応えて、同じような経験を持つ人たちからダンナ様に厳しいレスがありました。「前例は作らないとないですよ。誰かが作らないといけませんよね。私いつも思うのですけど、『前例がない』とかいう旦那様達って、逃げてるだけだと思います」。「女性だって戦って勝ち取ってきたものがあるんです。男だって育児と仕事の両立の為ために戦うべきです」
上司を説得する魔法の言葉とは…
 とはいってもねー。男性の育休の取得率がなかなか増えないのを見ていても分かるように、両立に関して男性は、右見て、左見て、やっとゆっくり変わっていくのです。だから、いっそのこと法律でも罰則でも、なんでも使って「男性も育児に参加しないとダメ」と決めてしまったほうがいい。そうしたら、安心して男性も育児にかかわることができます。
 「隣の出方をうかがいながら……」というのは、男性が作った会社も、また同じです。やはり1社だけで変わることはできません。
 先日取材してきたのは、関西の大手35社が参加するダイバーシティーの勉強会。さまざまな働き方を認めながら、人材を活用する取り組みで、出し惜しみなくアイデアや事例を披露し、共有するねらいで開かれています。
 そこで魔法の言葉を聞きました。「××社さんもやっておられますよ」。上司を説得しやすいそうですよ。
 東京でも「新世代エイジョカレッジ(エイカレ)」という合同プロジェクトがありました。異業種7社の営業職女性たちによるもので、「営業で女性がさらに活躍するための提言」を各社の経営陣にプレゼンするのですが、これも合同で開かれたのが良かったと思います。
 プロジェクトに加わった女性たちだけでなく、経営層の男性たちも、右見て、左見て、いろいろな気づきがあったはず。せっかくの提案も、1社だけでは動かなくても、「よそはもう実現させている」という事例があれば、「うちもやらないと……」となります。新しい働き方や男性の育児参加――男の人を動かしたいときは、ぜひ周りを巻き込んでみてください。変化のスピードがぐっと速まります。
 「みんなで渡れば」男性も怖くないのです。


引用元:
パパは1人じゃ変われない。会社も1社じゃ変われない。でも…(読売新聞)