前回は生殖補助医療で生まれる子が健康であることがとても重要なことをお話しました。
今回はその続きです。生殖補助医療の治療では、卵子を体外に取り出して受精させ、数日間体外で培養してから子宮内に戻すという作業を行うので、自然とは全く異なる環境で卵、胚が発育します。このため、いろいろな角度から、この治療法の安全性、生まれてくる子の健康を常に検証していかなければいけないと考えています。
今では毎年、全世界でたくさんの子が、この生殖補助医療で生まれており、特に、大きな話題となっていないので、安全なのかもしれません。しかし、そうはいっても、常に、一歩引いてその安全性に常に注意を払っていくべきだと私は考えています。
生殖補助医療で妊娠した児の出生体重を見てみましょう。日本では2007年の治療からインターネットで個々の治療を登録するようになったので、より詳細に治療の状況がわかるようになりました。2007年、2008年に治療して生まれてきた子の体重を調べました。
一般に子の体重は、妊娠週数が進むと重くなります。また、双胎(双子)は単胎児と比較すると体内での発育環境が変わります。そこで図1のように、生殖補助医療で治療して生まれた子のうち、、GIFT法や卵子を用いた治療、多胎妊娠、早産、過期産を除き、単胎正期産、つまり一人の子を妊娠37週〜41週の間で産んだ場合について、その体重を検討しました。
分娩時週数別、新鮮胚治療・凍結融解治療別に子どものの体重を検討しました。また、同じ時期に生まれた日本全体の児の体重も、厚生労働省からデータの提供を受けて検討しました。
各在胎週数別、各治療別の体重を示しています。どの在胎週数でも新鮮胚治療により出生した子が一番軽く、次が日本全体、一番重いのが凍結融解胚治療で出産した児でありました。各ポイントの体重差は約50gでありました。これらの各点の差は、それぞれの症例数が多いことより、すべて有意な差となりました。
結果をみると、新鮮胚治療を行うと自然よりも小さく生まれます。新鮮胚を一度凍結し、その後融解して胚移植に用いると、自然よりも大きく生まれるという結果となりました。新鮮胚児、自然児、凍結融解児の体重差は高々50gで、この差も成長すると失われます。それはその後、体重には多くの環境要因等が作用するので、差がなくなるのはうなずけます。しかし、出生時に明らかな差を認めることは、何かが起こっていることは間違いないと考えています。その起こった原因がまだ解明されていないのです。
心配しなくてもよいものかもしれませんが、自然とは大いに異なる環境で卵子、胚が育つのですから、原因がわからない以上、詳細に調べる必要があると思います。人類の将来に禍根を残さないためにも、今後もこの原因を検討していかなければならないと考えています。
引用元:
《29》 自然妊娠と、生殖補助医療で生まれた子どもの体重の違い(朝日新聞)