年末年始で話題を少し変えてお話しましたが、今回はもとに戻って生殖補助医療に関するお話をします。
生殖補助医療の有益性を考えるときには、単にこの治療で妊娠できることでなく、安全に出産することが、一つの目標となります。しかし、児が生まれることも大切ですが、さらに出生した児が健康であることも、とても重要です。
生まれた児が健康であることを計る指標の一つに、児の先天異常率があります。自然の妊娠での先天異常率に関しては、2014年9月4日の第14回「女性の年齢と子の染色体異常の確率」でお話したようにお母さんの年齢が大きく影響します。生殖補助医療においても採卵時のお母さんの年齢に影響すると考えられています。
凍結・融解胚移植では、採卵時には移植されなかった胚を凍結保存し、何カ月または何年か保存した後に融解して胚移植するので、胚を移植した時のお母さんの年齢は、採卵した時の年齢よりも高くなりますが、胚の状態は凍結時の状態が維持されますので、凍結期間が長期の症例が多い場合は、凍結融解胚移植での年齢別の先天異常率は、新鮮な胚を移植よりも低くなる可能性があります。
これは2012年の治療結果です。お母さんの年齢を1歳きざみで先天異常率を解析するには症例数が少ないので、年齢群を5群に分けて解析しました(〜29歳、30〜34歳、35〜39歳、40〜44歳、45歳〜)。また、治療を新鮮胚治療の体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)、さらに凍結融解胚移植治療(凍結)の3つに分けて解析しました。
結果をみると、39歳まではどの治療群でも先天異常率は2%弱で、特に凍結融解胚移植治療では低めでしたが、これは有意な差ではありません。また、40〜44歳の群では2.5%強と、年齢の若い群に比較して先天異常率が高い値を示しました。45歳〜では、体外受精や顕微授精の治療の先天異常率が0となっていますが、これは出産児数が少ないため異常児もいなかったのが理由です。すべての年齢を合計すると約2%で、これは日本における自然に妊娠し出産した児の先天異常率と変わらない数字です。
しかし、生殖補助医療の治療でも年齢が高くなると、先天異常率も上昇することがこのグラフからわかります。よって、この治療を受けるにしても、やはり若い時期の方がより安全であることがわかります。
この点からも自分の人生設計を立てるときに、たとえ、不妊になって治療を受けることになっても、より安全な時期あることを考慮して設計して頂きたいものです。
引用元:
生殖補助医療で生まれた子の先天異常率(朝日新聞)