分娩を取り扱う病院の産婦人科医の約4割を女性医師が占めており、その半数以上が妊娠・育児中であることが、日本産婦人科医会の調査で明らかになった。妊娠・育児中の女性医師の割合は増加傾向にあり、当直や勤務時間を緩和するなどの支援体制を整える病院も増えているが、一方、それ以外の医師は、産科医不足の中で依然として過酷な勤務環境にあることもうかがえた。同医会は「不公平感からも産科離脱に至る危険のある状況」と、子育て中以外の医師にも配慮した環境改善の必要性を指摘している。【烏美紀子】
 調査は、同医会が2007年から毎年行っている「産婦人科勤務医の待遇改善と女性医師の就労環境に関するアンケート」。今回は全国の分娩取り扱い病院1097施設を対象に実施、780施設(71.1%)から回答を得た。

■育児中の医師、分娩担当は半数に満たず

 調査結果によると、回答施設の常勤医師数は4916人。このうち女性は1903人(38.7%)で、996人が妊娠中か小学生以下の子どもを育児中だった。妊娠中の女性医師に対して夜間の当直勤務を軽減しているという病院は46.4%あった。小学生以下の子どもを育児中の女性医師については、全面的に当直を免除されている人が45.3%だった一方、ほかの医師と変わらず当直勤務をしている人も23.8%いた。また、育児中の女性医師で分娩を担当しているのは43.7%にとどまった。

 全体を見ると、1か月当たりの当直回数は平均5.8回。救急や小児科といった他診療科に比べても多く、調査開始時から改善していない。当直翌日を休みにするなどの勤務緩和を設けている病院は23.1%(180施設)にとどまる上、実際にそうした体制が取れているとしたのはわずか10施設だけだった。

 調査を担当した日本医科大の中井章人教授は、「(ここ数年の)産科医師の微増の効果は、妊娠・育児中の女性医師の増加で相殺されている」と分析。チーム制の徹底などで妊娠・育児中の医師の力をもっと生かすと同時に、当直翌日の勤務緩和の導入などが必要だとしている。



引用元:
産婦人科の女性医師、半数が妊娠・育児中- 不公平感で産科離れ懸念、医会調査(キャリアブレイン)