東京都は5日、男性の不妊治療にかかる費用に対し、自己負担が半分になるよう上限15万円を独自に助成する方針を決めた。そもそも、男性の不妊症とはどのようなものなのか。この問題に詳しい石川智基医師に解説してもらった。

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 東京都は、男性の不妊治療にかかる費用に対し、自己負担が半分程度になるよう上限15万円を独自に助成する方針を決めた。男性不妊治療に対する助成金制度は、2014年度に三重県が全国に先がけて実施し、この流れが全国的に広がりつつある。

 不妊症に悩むカップルは6組に1組の割合といわれるが、日本では不妊症といえば女性の問題という先入観が少なからずあり、また治療できる不妊治療医療機関は大半が婦人科であり、一般男性にはハードルが高い現状がある。しかしながら、不妊原因の約半数が男性にもありうるという啓発活動も進み、夫婦揃っての受診や男性自らが検査を受けることも徐々に増えてきた。
男性不妊の主な原因 「精子減少症」と「無精子症」
 男性不妊の主な原因は、精巣の機能に何らかの異常があり精子の数が少ない「精子減少症」と、射出精液中に精子が全く出てこられない「無精子症」に分けられる。

 「無精子症」の患者は一般男性の100人に1人といわれており、「無精子症」には、精子が全く造られていないか、ほとんど造られていない精巣機能の問題である「非閉塞性無精子症」と、精巣では精子が造られているのに精子の通り道(精路)がふさがって射出精液中に出てこられない「閉塞性無精子症」がある。
「非閉塞性無精子症」とは?
 無精子症のうち約85%が非閉塞性無精子である。従来は治療の対象とならなかったが、2000年頃から手術用顕微鏡を用いて精巣の中でわずかに精子が造られている精細管を探す、顕微鏡下精巣内精子採取術 (micro-TESE)が行われるようになり、現在では、非閉塞性無精子症患者が挙児を得るための唯一の治療法として確立し、普及している。一般に精子回収率は40-50%程度である。

 さらに最近、完全な無精子症ではないが、何回か精液検査を行うと、ときおり極わずかに精液中に精子が出現するような場合においては、精液中に出てきた精子は質が低下していることが多く、そのような精子を用いて顕微授精するよりも、精巣内で形成されたところの精子を用いて顕微授精を行うほうが、着床・妊娠・出産率はいずれも良好であることが報告されている。これは精子が射出されるまでの通り道(精路:精巣上体、精管、前立腺など)において、精子が種々のストレスを受けて損傷され、その質が低下していることが原因と考えられる。

「閉塞性無精子症」とは?
 精子の通り道(精路)における閉塞が原因であり、この場合、閉塞部位を再建(バイパス)することにより、自然妊娠が期待できる。特に精管切断術(パイプカット)後はいい適応になる。しかし、再建不可能な場合には、精巣精子採取術(TESE)によって精巣から採取した精子を用いて、顕微授精を行うことが勧められる。ほとんどの患者から精子が回収でき、顕微授精に進むことができる。
夫婦揃って不妊治療を行う社会に
 「閉塞性無精子症」は高い確率で精巣内精子の回収が可能であるが、「非閉塞性無精子症」の場合、精巣内で精子が造られているかいないかは実際に手術を行わないと判らない。この手術は、保険適用外のため自費診療となり、30〜50万円程度が必要となるため、患者には精神的、肉体的、経済的にも大きな負担となっている。

 不妊症において、現時点でも多くの自治体の規定で、「治療開始時に法律上の婚姻関係にある夫婦で、特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、又は極めて少ないと医師に診断された方」に関しては、助成が受けられるようになっている。 すなわち、これまでは特定不妊治療(体外受精、顕微授精)に関する助成のみで、女性側治療への助成に限定されていたということである。

 この度、東京都が男性不妊治療に対する助成金をスタートさせるということで、不妊症全体がカバーされるような助成金制度が全国の自治体に広がり、患者の精神的・金銭的負担が少しでも軽減され、夫婦揃って受診しやすい環境が全国的に整えられていくことが期待される。




引用元:
東京都が男性にも助成金 男性の不妊症の実態は? 医師・石川智基(社会(THE PAGE))